鈴木おさむ「震災後の楽屋で大爆笑とるさんまは超人」

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放送作家の鈴木おさむが売れないお笑いコンビを描いた『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』(弊社刊)を読んだ後、ある若手漫才師は人目もはばからず号泣し、元芸人だった構成作家は机につっ伏して嗚咽したという。売れないコンビが必ず一度は迫られる「いつ辞めるか」の決断を描いた同書を読んで感動したというオードリー・若林が、著者の鈴木と対談。芸人というものの”業”について、2人はこう語る。

* * *
鈴木:きっと若林君も、何人も仲間の芸人たちが去ってゆくのを見たでしょう。

若林:ええ。芸人仲間で楽しく遊んでたのに、ある日突然、何にも言わずにアパートを引き払ってるヤツもいて。空っぽになった部屋を見て、「相談ぐらいしてくれたっていいじゃねえか・・・」と、涙がボロボロこぼれたときもありました。

鈴木:『芸人交換日記』を読んで泣いたっていう、いま売れてる芸人さんたちは、そういう去って行った仲間たちの屍の上を歩かせてもらってることに、言葉じゃ言い表せない申し訳なさと寂しさを感じてるんじゃないかな。

若林:そうだと思います。30歳が近くなるとお互い「解散するなよ!」とは、冗談でもあんまり言えなくなって。

鈴木:逆に、30歳近くで仕事が順調に増えてくと、それはそれで微妙なんですよ。仲間同士で飲んでて、「お前レギュラーいくつになった?」とか、生ぐさい探り合いをするようになる。

若林:(苦笑)さすが、ご存知ですね。

鈴木:『芸人交換日記』のタナフク(註:同書の主人公・田中が「イエローハーツ」解散後に組んだコンビ)みたいに、売れた芸人には売れたことの苦悩もある。三月の大震災の後にフジテレビで、スタッフやら誰やらの大爆笑がどっかんどっかん聴こえる部屋があると思ったら、さんまさんの楽屋だったんです。節電で局内が薄暗くて、雰囲気がドーンと沈んでるのにですよ。超人的なハートだと思った。あのクラスまで売れた人が背負わされてる、笑いを振りまく使命の重さって、僕らには想像もつかない。

若林:本当、神がかってますよね。ウチらなんて全然、遠く及びません。

※クイック・ジャパン Vol.95

【関連リンク】
クイック・ジャパン Vol.95-太田出版
芸人交換日記 ~イエローハーツの物語~

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。