昨年4月に行われた『ニコニコ超会議2016』で大反響を呼んだのが、中村獅童がボーカロイドの初音ミクと共演した超歌舞伎『今昔饗宴千本桜』だ。伝統芸能とテクノロジーが融合する舞台は、凄まじい熱狂のうちに終了したが、前代未聞のプロジェクトはどうやって生まれたのか? 『クイック・ジャパン』vol.131で、獅童はこう語っている。
「歌舞伎的な手法と最新技術の融合っていうのは面白くなるんじゃないかと思いましたね。ただ、実際に舞台上で最新技術と生身の人間がどう絡むのか、それを面白く見せるためには歌舞伎のどんな手法が有効なのかっていうのは考える必要がありました」
会場となった幕張メッセの収容人数は数千人。しかし、長い歴史の中で培われた歌舞伎の魅力は、しっかりと会場全体に届いたようだ。
「僕もロックコンサートで何度か行きましたけど、まさかあの場所で歌舞伎を演じるとは想像したこともなかった。でも、結果的にあの大会場でも、歌舞伎の衣装や隈取のような化粧法がちゃんと映えたんですよね。やはり先人方の残してくださった伝統があるからこそ、新たな試みができるっていうのを実感しましたね。例えば、立廻りに大梯子を使うなど、普段の歌舞伎座でやっていることでも、きちんと一番後ろのお客様まで届いていたと思います」
昨年の成功を受け、今年の『超会議2017』では新演目『花街詞合鏡』が披露された。
「その時代の最新技術を取り入れるっていうのは、江戸時代からずっとやってきたことだと思うんです。隈取にしたって、最初は実験的な演出技術だったわけで、それがよかったから残ってきた」
と、語る獅童は、「100年後にはこの超歌舞伎が古典になってることだってあるかもしれない」と述べており、超歌舞伎にはかなりの手応えを感じているよう。彼の開拓精神は、歌舞伎の可能性をまだまだ広げそうだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.131(2017年4月24日発売/太田出版)
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