横山三国志の驚きの最上級表現「げえっ」 全巻で何回登場した?

学び
スポンサーリンク

時代が変わっても人気が衰えない横山光輝の『三国志』で、思わず口に出してみたくなる表現が、驚きの最上級である「げえっ」です。誰がどう見ても、「ああ、この人はものすごく追い詰められているのだな」ということが一目瞭然ですが、この「げえっ」という表現は、いったい作中で何回登場したのでしょうか?

ただ、実際調べるにあたって注意しなければならないのが、あくまでも数えるのは「げえっ」に限定するということ。本作には「げっ」や「げーっ」という表現も登場します。しかし「げっ」は少々インパクトが弱いのと、「げーっ」はあまり出てこないことから、ここはカウントを「げえっ」に限らせて頂きます。

結論からいうと、こんなに印象的な「げえっ」は、あまり多くありませんでした。全体を通してたった20回。単行本で全60巻ですから、いかに少ないか。いや、これはむしろ「げえっ」が一度見たら忘れられない表現であることを証明しているといえるのかもしれません。

「げえっ」を発した人物別に見ていくと、もっとも多かったのは「一般兵士」の6回。やはり「やられ役」の定番の表現であるようです。ただ、兵士全員を同一人物と考えるわけにはいきませんから、こちらを「もっとも『げえっ』と言った人物」に認定することはできません。では、誰が1位なのかというと、全3回の曹操でした。意外と少ない? しかし「げえっ」に注目して読んでいくと、あることに気が付きます。

それは、曹操がほかのキャラクターに比べても、実に驚きの表現が多彩に描かれていること。自分の陣営に何か異変を感じると「うっ?」と声をもらし、実際に敵が襲ってくると「ひっ!」と怯える。そして、強敵が自分の命を狙ったときには「げえっ」と最大限に驚いてみせる。勝手ではありますが、これを「曹操の驚きの三段活用」と名付けさせていただきます。

曹操がキングオブ「げえっ」であることからわかるのは、物語の主人公を輝かせるためには、いい引き立て役が欠かせないということ。「三国一の権力者」という強敵属性をしっかりまとった曹操が追い詰められ、見事に「げえっ」と狼狽してくれることで、主人公たちの活躍が輝くのです。その役割をしっかりまっとうしたからこそ曹操は、「乱世の奸雄」「天意の簒奪者」と非難されながらも、今も三国志で好きなキャラクターランキング上位の常連となっているのでしょう。

◆ケトル VOL.37(2017年6月14日発売)

【関連リンク】
ケトル VOL.37

【関連記事】
アジアに広がる三国志の輪 中国・韓国・タイでもブームに
三国志ファンにはおなじみの「ジャーンジャーン」を探してみた
三国志研究の第一人者に質問 「孔明の罠」は実際に凄かった?
中国古典の人名 「劉備玄徳」はどこまでが名字でどこまでが名前?

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品
ケトルVOL.37
太田出版