訪日外国人が、ここ5年で4倍の2400万人に増加したことをご存知でしょうか? 早くも爆買いは減少傾向で、経済産業省も今後の課題は「文化体験の需要に対する受け皿を作る意味でも付加価値の高い体験型観光の充実は急務」と報告しています。そんななか、日本ならではの高付加価値の体験型観光の代表のひとつ「書道」。日本人には知られていませんが、訪日外国人には大変人気の書道「和様(わよう)」に、今、注目が集まっているそうです。
「和様」とは「唐様(からよう)に対することばで、日本風、日本様式をさす語として用いられ、美術史ではとくに書、建築などの様式に用いる」(日本大百科全書)とあります。なぜ、この「和様」というものが外国人に人気なのでしょう。この和様ブームの火付け役「わよう書道会」(東京都文京区湯島)に外国人に和様が人気の理由を問い合わせをしてみると、驚きの回答が返ってきました。
「今、日本の書道では漢文(唐様)が主流ですが、英語で漢字はChinese characters、漢文はChinese writing。当たり前ですが日本語ではありません。訪日外国人は、日本語(Japanese)を書く書道Japanese styleの体験をしたい、つまり、それが『和様』なのです。」
と答えてくれたのは、わよう書道会 代表うどよしさん。この回答を聞いて、「目から鱗」でした。漢文は国語で習うので日本人には外国語という認識が抜けていました。
「明治時代に、今の書道の唐様を公式書体にしたことから、読める日本語を筆で書く和様文化が廃れました。過去、焼酎『よかいち』で有名なバクザン先生こと榊莫山氏も『読める書は誰もやらない』と嘆いていましたが、最近、和様とは真逆の前衛の抽象書家 石川九楊氏が、新聞のインタビューで『誰にも理解できる書にならないとホンモノではない。書もまた、誰もが読めるほうがいい。』と和様の評価を示唆しています。」
書道に日本語を書くというイメージがない原因には、和様文化の衰退と関係していたのです。
◆文化の逆輸入 インバウンドで日本人に届き始めた「和様」
「外国人の体験は、気付いたら毎年100名以上受け入れる状態です。『書道=漢文』の日本人より、訪日外国人の方が和様Japanese styleの価値を理解しています。そして、この現象に気付いたメディアから取材が増え、その情報を見た日本人が『こんな書道をやりたかった』と反響が増えました。
難しい漢文、仮名、または、調和体を書きながら、心のどこかで、日本語で、誰でも読める書で書きたいという願望を持っていたサイレントマジョリティの層に浸透しつつある気がします」
外国人が認めて、日本人が認めるという日本ならではの現象ですが、さらに、有名な書家が、和様傾向を支持する追い風もあれば、サイレントマジョリティが動き出すかもしれません。
わよう書道会は、和様を再興し、今の日本語を書く「和様」の選択肢を増やすため、うどよしさんが立ち上げた団体です。外国人はもちろん、より多くの日本人に「和様」を知ってもらうことと、同じ志を持つ仲間が集い、作品発表できる場として「和様の書展」を企画、運営しているそうです(東京芸術劇場 10月13-15日 詳細は最後)。
「和様の書展は、受賞者はメリットを享受できるよう工夫をしています。その目玉が“企業審査員”の採用です。今年も20以上の企業が審査員が内定しています。」
出版、メディア、書道関係、ITなど、聞いたことのある企業名がずらり……。でも、専門家ではない企業の素人審査に批判はないのでしょうか?
「むしろ『市場の意見が聞ける書展は初めて』と大好評です。今、書を活用しているのは、ほとんどが企業です。その市場の意見は、お金を払っても聞けません。毎日開催されている専門家審査のある書展と比べると、希少性と商業的な価値で別物です。さらに、1審査員1賞の仕組みなので、受賞した書家は審査企業と関係が発生しますし、働きかけます。事実、受賞者で、審査企業に書が採用された方がいます」
1審査員1賞は、審査結果の全公開の意味なので不正審査や忖度も発生しにくいとのこと。事実、前回、出品した某有名人は落選したそうです(売名行為と言われないように厳しく見られるようです)。
◆「続け字、崩し字不可」は初心者に有利なハンディキャップマッチ
和様の書展では、“読める書道”を保持するために「続け字、崩し字不可」という縛り(ルール)があるそうです。
「『続け字、崩し字不可』は、上級者に大変厳しいルールです。前回の最多受賞者が書道の初心者だったのは、アイディア勝負の初心者に対して、上級者が『続け字、崩し字』に代わる芸術的表現を提示できていなかった結果です。
日本の公式書体が“漢字仮名交じり”の“活字体”になったのは明治以降です。つまり、“読める書道”の和様には、古筆や古典のような参考資料がありません。つまり、“和様は作らなければ生まれない”ということなのです。これが、従来の書道とは違う和様の最大の魅力であり、明治以降、150年間、和様の需要があるにも関わらず、再興できないまま残っている理由なのです」
“読める”というのは簡単そうに見えて、すごく奥が深い話とわかってびっくりです。また、書道業界でも初の試みとして、全国の書道道具店に「推薦枠」を設定したそうです。
「都市部は、様々な先生がいて相談先の選択肢も豊富です。しかし、地方は選択肢は多くないので書道道具店に相談し、道具選びから連携することで、エリア独自の和様作品ができるかも?と期待もしています」
推薦枠は割引クーポンが付いているそうです。もし、店舗が推薦枠についてご存知ないようでしたら、わよう書道会にご一報くださいとのことです(わよう書道会では、推奨の道具の販売も行っているそうです)。
◆2020年 東京オリンピックで和様を世界に知ってもらいたい
和様の書展は、読める日本語なので、日本語を学んだ外国人も応募できるそうです。
「海外に多くの日本語が定着していますが発音だけで、ひらがなやカタカナの文字も和様を通じて定着させたい。東京オリンピックは、国内外に向けた和様普及の最大、最後のチャンス。2020年まであと3年しかありませんので、この記事を読んだ皆さんから、少しでも多くの協力をいただけたらと思います」
外国人人気からの逆輸入で日本で火が付いた「和様」が、オリンピックを契機に再度、海外を目指す。日本語を書く毛筆文化“和様 Wayoh”が世界へ進出するストーリーが見えました!
和様の書展では、審査員/スポンサーは現在、募集中とのこと。興味がある企業の広報、CSR担当は検討してみてはいかがでしょうか?作品募集の締切は9/11とのこと。詳しくは、「わよう書道会」サイト(http://wayoh.jp/ )か「わよう書道会」検索。
【第7回 和様の書展】
会期:2017年10月13日(金)~15日(日)
会場:東京芸術劇場ギャラリー2(池袋駅直結)
作品締切:2017年9月4日(月)~11日(月)必着
サイト:http://wayoh.jp/7th-calligraphy-exhibition
問合せ:わよう書道会0800-812-6303(フリーダイアル)/udoyoshi@gmail.com
【関連リンク】
・第7回 和様の書展
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