脱北者、金革(キム・ヒョク)さんが、自らの半生と、北朝鮮の子どもたちの悲惨な状況を赤裸々に書き記した衝撃の手記『自由を盗んだ少年』の日本版が今月刊行。実話を元に制作された短編クレイアニメーション『パープルマン』の日本語字幕版がYouTubeで公開されている。
金革さんは、北朝鮮で孤児(コッチェビ)となり、孤児院、拘置所を経て、のちに脱北。北朝鮮と中国の国境を流れる豆満江を泳いで渡って、北朝鮮国境近くの中国の延吉(イェンジー)にたどり着き、モンゴルを経由して韓国にたどり着いた。
本の中で明かされる北朝鮮の拘置所の過酷さは、想像を絶するものだ。
〈警護員たちは音もなく監房の壁に沿って近づき、気に障ることをする囚人を見つけると罰を与えた。手を鉄格子から出させて拳銃の銃口を掃除する針金や五センチ角材で、容赦なく打ち下ろす。手は紫に腫はれ上がり血が流れた〉
といった苛烈な暴力は言うに及ばず、
〈空腹に苦しむ教化所の囚人は何でも食べた。教化所のネズミと山にいるヘビは、それこそご馳走だった。トカゲ、サンショウウオ、赤ガエルまですべて火で焼いて食べた。ぼくもネズミやヘビは皮を剥いで、身を切り開いて内臓を取り出した後、自分の体に張り付けて乾かして食べた。ヘビの卵も焼いて食べた。汚染された水も飲み、そして病気になった〉
と、栄養状態も劣悪。また、
〈拘留所内では、基本的に動くことが許されなかった。背筋をまっすぐ伸ばし膝を立てて座り、両手を膝の下に入れてじっとしていなければならない。体を這うノミやシラミを捉えようと体を動かすと、警護員に一日中、罰を与えられる〉
と、衛生面に関しても厳しい状況であることが記されており、作家で元外務省主任分析官佐藤優氏は、「北朝鮮の拘置所と較べれば、私が512日間勾留された東京拘置所は地上の楽園のような場所だった」との感想を寄せている。
短編クレイアニメーション『パープルマン』は、韓国の中央大学先端映像大学院キム・タクフン研究室が制作したものだ。韓国では、北朝鮮人のことを「アカ(赤)」と呼ぶ一方、韓国人はブルーが好きなため(韓国大統領の大統領官邸はブルーハウス(青瓦台)と呼ばれている)、主人公は、そのどちらでもない韓国在住の脱北者を「パープルマン」と思っており、それが題名に繋がっている。
キム・ヒョクさんがナレーションと、主人公の自分自身の声を担当した同作は、2011年ショートショートフィルムフェスティバルアジアの「アジアインターナショナル部門」にて優秀賞を受賞している。
【関連リンク】
クレイアニメ『パープルマン』 – Youtube
自由を盗んだ少年 北朝鮮 悪童日記 – 書籍案内
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