アメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と宣言して以来、波紋は広がり、各国は反発を強めている。エルサレムをイスラエルの首都と認め、米国大使館をエルサレムに移すことはトランプ大統領の選挙期間中の公約でもあった。その背景として最近ニュースなどで取り上げられるようになったのがエヴァンジェリカルズ(キリスト教福音主義派)の存在だ。彼らは一体どのような存在なのか?
エヴァンジェリカルズ(キリスト教福音主義派)はアメリカ国内に推定1億人というアメリカ最大の政治勢力である。1億人といえば、アメリカの人口の30~35パーセントを占めることになる。彼らは聖書の教えを絶対視する保守系キリスト教徒であり、宣教活動やロビー活動、草の根の政治運動を通じてアメリカ外交に大きな影響を与えている。そして彼らは神がユダヤ人にエルサレムを与えたのであり、当然エルサレムはイスラエルの首都として認められるべきだと考えている。
世界中の反発を受け、国際的な混乱を招くことがわかっていながらトランプ大統領が宣言を強行できたのは、エヴァンジェリカルズの支持があるからだ。実際宣言後、国際的な反発、国内での批判に反してエヴァンジェリカルズ内では高い支持率を維持している。エヴァンジェリカルズはエルサレム問題だけではなく、アメリカの様々な政策決定、特に外交政策の決定に大きな影響を与えている。エヴァンジェリカルズを理解できればアメリカを理解できると言っても過言ではない。
『エヴァンジェリカルズ アメリカ外交を動かすキリスト教福音主義』(マーク・R・アムスタッツ・著 加藤万里子・訳/太田出版)は福音派の信仰と政治信条を歴史的に解き明かし、アメリカ外交において果たしてきた役割を示した本だ。社会学者の橋爪大三郎氏は、同書の解説で、エヴァンジェリカルズについて、
「福音派は、欧米各国のなかで、アメリカにだけ現れた特異な動きである。教会史を振り返ってわかるように、アメリカは繰り返し、覚醒運動や教会刷新運動や新宗教や……といった、信仰再生運動を繰り返している。どの動きも、真実のキリスト教信仰に復帰しようという、『真面目な』動機にもとづいている。アメリカは、信仰について『真面目な』人びとの国なのである。
福音派の特徴は、教会の形態を必ずしもとらない、宗教をまたがった信徒の動きだということである。(中略)こうした福音派の教えは、市場経済の競争社会のなかで不完全を抱える人びとに、アピールしている」
と、述べている。なぜアメリカはイスラエルを支持し、核兵器を持ち続ける北朝鮮に人道支援を行うのか? 彼らはなぜ「アメリカは他国より質的に優れている」と信じ、「世界中で善を実現する特別な任務を持つ」と自負しているのか? 国内に推定1億人の信者を持つアメリカ最大の宗教勢力〈福音派〉の信仰と、外交において果たしてきた役割を解き明かす。
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・エヴァンジェリカルズ アメリカ外交を動かすキリスト教福音主義
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