トマト缶の実態 腐ったトマトの再商品化「ブラックインク」とは

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トマト缶と言えば、どのスーパーでも売られている身近な食品だが、生産や加工の様子が語られることは極めて珍しい。トマト缶の生産と流通の裏側を初めて明らかにしたノンフィクション『トマト缶の黒い真実』(ジャン=バティスト・マレ・著 田中裕子・訳/太田出版)では、通称「ブラックインク」と呼ばれる、古くなって酸化が進み、腐ってしまった濃縮トマトを使った商品の実態をリポートしている。なぜ腐った濃縮トマトが商品価値を失わないのか? 同書によれば、こんなカラクリがあるという。

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グローバル化した市場では、ある国で衛生基準を満たさなかった濃縮トマトは、別の国に運ばれて安く売り飛ばされる。標的にされるのは、衛生基準がゆるい、税関審査が厳しくない、管理体制に不備がある、公務員が買収されやすい、といった国々だ。こうした国へ安く売られていった腐った濃縮トマトは、工場でほとんどコストをかけずに加工され、その国の市場で流通される。加工トマト業界の専門家たちは、アフリカの状況に関してこう口をそろえる。

「アフリカの市場で重要なのは価格だけだ。品質は問題じゃない。できるだけ安い濃縮トマトを誰もが欲しがっていて、それがどんなにひどい品質であっても、必ずいずれは買い手がつくんだ」

通称「ブラックインク」と呼ばれる商品が出回っているのも、主にアフリカの国々だ。古くなって酸化が進み、腐ってしまった濃縮トマトのことだ。本来の赤い色は失われ、まさにインクのように黒ずんでいる。品質は最悪だが、非常に安く取引される。こうしたドラム缶入りブラックインクを売るために、赤い色をしたそれほど古くない濃縮トマトを混ぜることもある。

だが、これはまだましなほうだ。もっともよく行なわれているのは、水で希釈した濃縮トマトにデンプンや食物繊維を加えてとろみをつけ、着色料で鮮やかな赤色に染めるやりかただ。これならほかの濃縮トマトを混ぜるよりコストが安くすむ。こうして、あたかも新鮮な商品であるように偽装されているのだ。

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食料廃棄を少しでも減らすのは食品業界の大きな課題だが、もっとも優先すべきは消費者の安全確保のはず。果たしてこれを企業努力と呼ぶべきなのだろうか……。フランスでも話題沸騰のノンフィクション『トマト缶の黒い真実』は全国書店で発売中。3月14日には、著者によるトークイベントが東京・新宿で開催される。トークイベント「トマト加工産業のグローバリゼーションから見える世界」 は、2018年3月14日(水)の19:00~21:00、カフェ・ラバンデリアにて開催。

【関連リンク】
ジャン=バティスト・マレ著『トマト缶の黒い真実』 特設サイト
トマト缶の黒い真実-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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