シンガーソングライター折坂悠太 アルバムタイトル『平成』に込めた思い

カルチャー
スポンサーリンク

文語的な歌詞を独特の歌唱法で歌い上げるシンガーソングライター・折坂悠太が、10月にニューアルバム『平成』をリリースした。平成元年生まれの折坂は、このアルバムタイトルにどんな意味を込めたのか? 2018年10月25日発売の『クイック・ジャパン』vol.140で、折坂はこう語っている。

「ここ最近ライブの前口上で日付を言っていたんですね、『平成○○年○月○日』って。どの日も、僕とお客さん、それぞれに個人的な事情があるわけですけど、同時にライブは日付と場所を持った公のイベントでもある。そうやって個人的な出来事とパブリックなものとが結びつくのが面白くて。歌だって僕の個人的なことから出発しても、受け取るお客さんはそれぞれバラバラに思うことがありますよね。『平成』も、そうした個と公の関係を象徴する言葉じゃないかと思うんです」

アルバムには、2011年に震災直後に感じた心情を思い起こしながら作った曲もあるという折坂。声や節回しに特徴がある彼は、2年前に肺を手術したが、それは歌い方に何か影響があったのだろうか?

「肺気胸だったんです。手術で患部を切除したら、きちんと肺に空気が回るようになって。当然、すごく歌いやすくなりました。あと、以前からポスポス大谷さんや鈴木伸明さんといったホーメイ(中央アジアに伝わる喉歌)のミュージシャンのライブを観て影響を受けたりもしましたね。松井文と夜久一という同世代のシンガーソングライターとレーベル『のろしレコード』を起ち上げて、彼らとツアーを回ったのも大きかったな」

幼少期をロシアやイランで過ごしたという彼は、「俺には何があるんだ?」というマインドを常に持っているのだとか。平成という時代も間もなく終わるが、『平成』というタイトルには、

「平成が終わるといっても、わりとあっさりしてて、なにもなかったとすら言われることもある。でも、そこで生きてきたことを自分なりに表現できなかったら、歌をうたっている意味もないじゃんって」

という思いも込められているそうだ。

◆『クイック・ジャパン』vol.140(2018年10月25日発売/太田出版)

【関連リンク】
クイック・ジャパンvol.140

【関連記事】
ブラックカルチャーの専門家・丸屋九兵衛が語る「黒人英語」に隠語が多い理由
CD不況とは無縁 存在感を増し続ける唯一のジャンルとは?
M・ジャクソンは『スリラー』のPVでゾンビと踊る予定ではなかった?
YAZAWAが「漢字とひらがなだけは勉強しろ」と語った日

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品