来年1月4日、新日本プロレスの平成最後の大舞台となる東京ドーム大会(通称・イッテンヨン)が開催されます。イッテンヨンは、年間150近く行われる新日本の興行の中で最大のもので、1年の総決算といえる大会。それだけにイッテンヨンを100%楽しむには、2018年の新日本に何があり、それがいかに東京ドームの闘いに結びついているのか知っておくことが重要です。2018年の新日本をめぐる“流れ”を振り返ってみましょう。
まず知っておきたいのは、メインイベントのケニー・オメガ×棚橋弘至について。今年6月9日、大阪城ホールで行われた大会でケニーはIWGPヘビー級王者のオカダ・カズチカと「時間無制限3本勝負」に挑戦しました。
かつて1時間フルスロットルで闘っても決着がつかなかったことから提案された完全決着ルールですが、事前の予想を大幅に超え、2人はタイトルマッチを3本連続で行うような驚愕の闘いを見せます。トータル試合時間はなんと64分50秒。死力を尽くした攻防の末、ケニーが念願だったIWGPヘビー級王者に輝いたのです。命を削るような勝負を行い、名試合を連発するケニーは、いつの間にか“ベスト・バウト・マシン”と呼ばれ、新日本のトップレスラーとなりました。
しかし、そんなケニーのスタイルに異を唱えたのが棚橋。夏の「G1 CLIMAX28」(G1)で優勝して東京ドームのメインでIWGPヘビー級王座の挑戦権利証を手にすると、命がけの危うさが魅力となっているケニーの壮絶なプロレスを「品がない」と酷評。新日本を長年支えた立役者として、「プロレスは激しいものであっても、残酷なものであってはならない」と言い切りました。
もちろん、ケニーは「お前のスタイルは時代遅れだ」と反発。善玉×悪玉のような勧善懲悪の物語ではなく、プロレスのスタイルをめぐる“イデオロギー闘争”が年明けのイッテンヨンの焦点となったのです。
◆ファンが衝撃を受けた神戸大会の裏切り事件
もうひとつ注目したいのが、オカダ・カズチカの所属する「CHAOS」をめぐる抗争です。オカダは2012年の凱旋帰国以来、同じユニットの外道というマネージャーを帯同していました。オカダの試合後に外道が、「レベルが違うんだよ!」と叫ぶマイクも定番となり、すっかり観客に浸透していましたが、今年のG1でオカダが外道からの“卒業”を宣言。同じユニットに所属しながらも、独り立ちすることを表明します。
外道も「これからは陰ながら応援する」と温かい言葉で送り出した……と思いきや、なんと9月23日の神戸大会でCHAOSを裏切ったジェイ・ホワイトとともにオカダを襲撃。6年半にも及ぶ2人の親密な関係を知るファンに衝撃を与えました。その後、ジェイは外道、さらに外道の兄弟分である邪道とともにヒールユニットの「BULLET CLUB」(BC) に加入。オカダは東京ドームでジェイへの“制裁マッチ”に臨むことになりました。
そして、この内紛は別の流れも生みました。ジェイの裏切り以来、試合後にBCたちの襲撃を受けていたオカダでしたが、10月27日の後楽園大会で長年のライバルだった棚橋が登場して窮地を救ったのです。しかも、直後に2人はリング上でがっちり握手。イッテンヨンの前哨戦として、まさかの越境チームが組まれることになりました。これは一時的なものなのか、それとも新しい何かの始まりとなるのか。オカダも棚橋も今後の展開を明言していませんが、それだけにファンの想像をかき立てています。
◆ケトルVOL.46(2018年12月15日発売)
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