デジタルネイティブ女子のトークは今回が6回目。これまでは塩谷 舞・石井リナ・大久保 楓の3人で鼎談が行われてきましたが、今回は大久保がお休みし、塩谷と石井が対談しました。2人の関心はまず「フェムテック」に。女性という意味のFemaleとTechnologyを組み合わせた造語ですが、ご存じですか?
女性の毎日を再デザインするフェムテック
リナ:女性の身体やマタニティの問題を解決する「フェムテック」の分野は本当に面白くて、最近よくチェックしてます。
舞:NY生まれのブランド「THINX」の生理用ショーツも流行ってますね。
リナ:海外ではD2Cのスタートアップとしてフェムテックの分野が盛り上がっています。最近では、急に初潮がきても困らないための「初めてキット」みたいなプロダクトをスタートアップ企業が開発したりしていて、教育的にも良いなって思います。
舞:その視点は私も大切だと思う。みんなが、いつでも誰かに相談できる状態にあるとは限らないから、予め自分で備えておけるのは良いよね。
リナ:それに、そういうセンシティブな課題を扱う商品はデザインも重要だと思うんですよ。たとえばAGAやEDなどの男性向けウェルネス商品に「hims」というブランドがあるんですけど……めっちゃおしゃれじゃないですか?
舞:うわー! すごくおしゃれ!!
リナ:「hers」という女性向けの展開もあって、こっちはピルや女性用バイアグラを販売してるんですけど、これも可愛い!
舞:デザインが良くて、ちゃんとメッセージ性もあって惹かれる。日本の生理用品のデザインは、改良して欲しいって声も多いよね。
リナ:そうですよね……。日本ではピルとか生理用品とかに対する心理的な抵抗がまだ根強くて、himsみたいにかっこよかったり、THINXみたいに合理的だったりするプロダクトが生まれにくい気がしています。日本も欧米に比べるとまだ、D2Cには資金も集まりにくいようですし。でも、だからこそ将来的にはBLAST Inc.でフェムテックに取り組めたらな、と思っています。
舞:日本はまだこれからだから、リナちゃんがんばって!
オンライン署名の活発化は成功体験のおかげ
リナ:今年はオンライン署名がもっと活発化するんじゃないかとも思っています。
舞:Change.orgみたいな?
リナ:そうです。最近、福岡地裁の判決に抗議するオンライン署名活動があって、「BLAST」でもその話題を取り上げたんですけど、4.5万人の署名が集まっています。
舞:著作権法の改正反対もそうだし、確かに、いろいろなところでオンライン署名が影響を持ち始めているかも。
リナ:署名という実体をもったことが大きいですよね。ネットやSNSを知らない人でも紙の署名には馴染みがあるわけで。共通言語が出来たという感じです。
舞:“匿名で起こったバズ”じゃなくて、オンラインでも、ちゃんと実名で記入して、みんな結構な責任をもってやってますからね。
リナ:そして実際に、『SPA!』に対する若者の署名が出版社を動かした、こんな経験は私たちにとって初めてで、だからこそ「自分たちで何か変えられるんじゃないか」という希望が大きくなっているのを感じます。
舞:成功体験が積めたのは重要。今まではゴールがわからなかったから、ともすれば自己満足みたいに感じられちゃってた。でも声を上げることの意義を多くの人に見せられたことで「自分も一石投じよう」って考える人は増えるだろうね。
リナ:より広く拡散するためのサポート体制も整ってきましたしね。
娘がAV女優に……世代間ギャップ理解の秘策
舞:たとえば夫婦別姓とか、新しい価値観を取り入れようとするときに、身近で一番のネックになるのは親や、その上の世代がどう感じるかだと思うんです。女性側から夫婦別姓を主張すると「うちの家を拒否された!」ととってしまう男性側の親もいるかもしれない。もちろん、家を拒否しているわけではなくて、フラットでありたいだけなのに。
リナ:世代間ギャップを克服するのは難しいですよね。
舞:でも、そうやって考え込んでいたら、夫から「たとえば自分の娘が『AV女優になりたい』って言い出したら、どうする?」って質問されて。
リナ:!?
舞:職業の自由や必要性は頭では理解していても、「なにもあなたがやらなくても」と言っちゃうかもしれない。20年後には、AV女優が、より一般的な職業になっていたとしても、一世代前の価値観で判断してしまうんじゃないかなぁって。多分、私たちと親世代の間にあるギャップもこれと近いと思うんです。
リナ:それ、わかりやすい! スーッと納得できます。
舞:私には普通でも相手はすごくショックを受けているかもしれない。だから、誰かと価値観が食い違うときは、いつもその喩えを思い浮かべてます。
「物ではなく空間」がミレニアルズの価値観
舞:最近、物を買うよりも、体験や思想の消費に興味があって。そうしたら「ホテル最強……!」と思ったんです。インスタも捗りますし(笑)。
リナ:ホテルは良いですよね! 日本にもそれ自体を目当に行きたくなるようなホテルがもっと増えてほしい。
舞:地方には、その土地の魅力含めて味わえるようなホテルが増えていて本当に楽しい。東京は地価の問題もあってなかなかないけど……。
リナ:テンションの上がるホテルが東京にあれば、私も誕生日や記念日の時に使うのになあ。
舞:最近はホテル経営者の龍崎翔子ちゃんが「ホテルを楽しむ」っていう文化を発信し続けているから、ミレニアル世代の間ではかなり広まってる気がする。私も今度、京都にある彼女のホテルのイベントに参加する予定。
リナ:え? 実は私も参加するんです! 楽しみだなあ。
舞:みんなでゲームでもしようか(笑)。あとは同じく京都にある名和晃平さんがプロデュースしたスタバにも行ってみたいですね。
リナ:ホテルも含めて、なんか最近「空間」って気になりますよね。
舞:アーティストも今は、限られた人に作品そのものを売るだけじゃなくて、どんどん「空間」を作る方向にシフトしつつあるよね。
◆ケトルVOL.48(2019年4月16日発売)
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筆者について
しおたに・まい。milieu編集長。1988年生まれ。東京とニューヨークの二拠点生活中。大学在学中に『SHAKEART!』創刊。Webディレクター・PRを経てフリーランス。
いしい・りな。BLAST Inc. CEO/SNSコンサルタント。1990年生まれ。『Instagramマーケティング』共著。現在は起業し、動画メディアBLASTの運営を行う。