1980年代後半のファミコン大ブームの時期、少年漫画誌には数多くのファミコン漫画(=ファミ漫)が掲載されていた。その内容は、ゲームの操作方法、ステージ、アイテムなどを紹介するもの、プレイヤーを主人公にしてゲームバトルをメインにストーリーが展開されるもの、メーカー公式設定を基にしたストーリーが展開されるものなど様々だったが、記念すべきファミ漫の第1号が『月刊コロコロコミック』で連載された『ファミコンロッキー』(あさいもとゆき・著)だ。
結果的にはその後、ファミ漫は大ブームとなるが、「ファミコン漫画の連載が始まる」と聞かされた時、作者のあさいもとゆき氏はどう思ったのか? 今年4月に発売された『超ファミ漫』(内田名人・著/太田出版)で、あさい氏はこう語っている。
「当時、ファミコンはまだ世の中に知れ渡っていない、誰も見たことがないくらいの時期でした。編集部から本体とソフトを貸してもらったんですが、その頃はまだ初期のファミコンで、ボタンが四角かったですね。ファミコンが出る前からインベーダーが好きで、よく喫茶店で遊んでいたので、ゲームを題材とすることに不安はありませんでした」
『ファミコンロッキー』というタイトルは、当時流行っていた映画『ロッキー』から取ったというあさい氏。その第1話で描かれたゲームは『F1レース』だったが、取り上げるゲームはどうやって決めていたのか?
「題材となるゲームは編集部からの指定です。私の方でリクエストすることはありませんでした。『次はこのゲームです』とカセットを渡されて、プレイして打ち合わせに望んでいました。苦手なジャンルは特にありませんでしたが、『たけしの挑戦状』は難しかったですね。アドベンチャーゲームなので、どこまで内容を描いていいか悩みました」
取り上げるゲームはハドソンの新作が多く、キャラバン(ハドソンが行っていた全国規模のゲーム大会)に参加したり、『コロコロコミック』のイベントに参加したこともあったとか。『ファミコンロッキー』と言えば、何と言っても“ウソ技”が印象的だが、これはどういった経緯で生まれたのだろう。
「『とにかく派手に』という理由です。ただゲームをやっているだけでは、漫画として面白味がない。最後のインパクトが必要ではないか、という打ち合わせのうえで、担当者のほうから……。反響はすごいありましたね。『あれは本当なのか嘘なのか』って」
あさい氏のお気に入りのウソ技は『ゼビウス』だが、読者から一番反響が大きかったのは『バンゲリングベイ』の「バンゲリング帝国の南のはずれにあるバミューダトライアングルから、最終兵器である帝国の顔が現れてくる」というウソ技。最後に、当時のファミっ子を興奮させたウソ技をいつくか紹介しよう。
【F1が音速を超える!!】『F1レース』
『F1レース』にてはじめて登場したウソ技。「ゲーム拳・必殺五十連打」を繰り出し、猛スピードでアクセルボタンを連打することによって、音速を超えるというもの。
【巨大化するハットリくん!!】『忍者ハットリくん』
最終グレードの16エリアにあるブラックホールの壁を、手裏剣を連打して壊すと、ハットリくんが吸い込まれて、出てきたときに巨大化するというもの。
【シルビアが襲いかかってくる!!】『スパルタンX』
24週目にミスターXを倒すと、囚われていたはずのシルビアが、真のラスボスとして襲いかかってくるというウソ。
懐かしの「ファミ慢」約150本をレビューした『超ファミ慢』(内田名人・著、2019年4月26日発売)は、全国書店・電子書店で好評発売中。
【関連リンク】
・超ファミ漫-太田出版
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