「あべし」をどう扱うか? 『北斗の拳』の雑魚の死に様で学ぶキャラゲーの歴史

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マンガやアニメのキャラクターを起用して制作されたゲーム、通称「キャラゲー(キャラクターゲーム)」は、かつて“クソゲー”の代名詞とまで言われましたが、2019年7月25日に発売された『CONTINUE Vol.60』は、そんなキャラゲーを特集テーマにピックアップ。今こそその魅力を知らしめるべく、キャラゲーを大特集しています。

キャラゲー界には『キン肉マン マッスルタッグマッチ』『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』『魔法騎士レイアース』ほか、数々の名作がありますが、傑作中の傑作が『北斗の拳』シリーズです。『超スーファミ』『超クソゲー』『超超ファミコン』などの著書があるフリーライターの箭本進一氏は、『CONTINUE Vol.60』で、”雑魚キャラ”を通じてキャラゲーの歴史をこのように分析しています。

〈『北斗の拳(以下、北斗)』の魅力のひとつは、雑魚悪党が秘孔を突かれ、愉快な悲鳴を残して破裂する様。悲鳴の珍妙さを楽しむ裏ギャグとして人気を支えました。『北斗』ゲームの歴史は、ジャンルの流行に翻弄されつつ、雑魚の破裂と悲鳴をどう再現するかの歴史だったのです。

『北斗』ゲームの黎明期はレーティングや規制がなく、ドット絵が抽象的であったためか、雑魚は全身がバラバラに。破裂シーンをシルエットで隠したアニメ版とは対照的です。ファミコン版では悲鳴「あべし」をアイテム化し、取るとケンシロウがパワーアップ。リアリティには欠けるものの、裏ギャグ要素を取り入れたことで、末永く親しまれる作品となりました〉

──その後、『3』以降はRPGになり、破裂の描写はリアルになりますが、その分愉快さは減少。さらに『6』からは対戦格闘になり、雑魚が登場する余地はなくなりますが、2000年、雑魚は華麗に蘇ります。

〈199X年も過ぎて家庭用『北斗』ゲームの発売も緩やかになった2000年、『世紀末救世主伝説』では大物拳士と雑魚の両方をピックアップ。特にプレイヤーの入力で悲鳴が変化する「リアルタイムあべしシステム」は、インタラクティブ性のあるゲームならではの形で秘孔と悲鳴を表現し、『北斗』のゲーム化に解答を示しました。

(中略)『北斗無双』ではアニメ版に近い黒塗りに赤い血での破裂を表現。以降、この組み合わせが雑魚破裂表現のスタンダードとなります。『北斗が如く』では、『無双』同様の破裂表現に加えて、悲鳴「あべし」を凶器として使用することが可能。ファミコン版へ先祖返りした感がありますが、フォトリアルな現行機のグラフィックスでは(原作にない種類の)愉快さが強調されており、このあたりのすり合わせが今後の『北斗』ゲーにおける課題であるのかもしれません〉

まさにゲームの進歩や発展とともに寄り添ってきた『北斗』ゲームたち。プレイヤーたちが何気なく通り過ぎてしまう雑魚キャラにも、制作者の熱い思いと苦悩の歴史が隠れているのです。

最新号『CONTINUE Vol.60』は2019年7月25日発売。定価1000円+税。

◆CONTINUE Vol.60(2019年7月25日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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