新型コロナウイルスによって、ソーシャルディスタンスの確保が余儀なくされ、人が集まる状態もNG。文化と触れ合う場も大きく制限されました。しかし、触れられなくなったことで好きなものを再認識したり、好きなものをこれまで以上に愛おしく思われた方は多いはず。『ケトルVOL.54』では、「みんなの大好き」と題し、有名人の方々に大好きなものについて聞いています。
モデルの市川紗椰さんが大好きなものとして挙げたのは「鉄道」。1日の休みなら近場、長めの休みでは地方や海外まで足を伸ばし、目当ての車両に乗ったり、知らない駅で降りてプラプラしたりするという彼女によれば、こんな状況でも鉄道を楽しむ方法があるそうです。
「イチオシは時刻表とGoogleマップを使って、理想の鉄道旅を妄想すること。温泉やグルメ、レコード屋さん、美術館といった立ち寄りスポットの場所と営業時間をチェック。乗り継ぎも重要なポイントです。いつか乗りに行く路線たちや車両たちへ思いを募らせて、旅の準備をする時間もまた幸せです」
緊急事態宣言は解除されましたが、“県またぎ”の旅行は憚られるような状況。これなら十分に鉄道を楽しみつつ、ソーシャルディスタンスをキープできます。
落語家の立川談慶さんがハマっているのは「筋トレ」。その理由を、「絶対裏切らない」「繰り返せば、誰にもご褒美として『筋肥大』は訪れる」と説く談慶さんは、自室に懸垂バーを設置し、重さではなく回数にこだわって筋肉を追い込んだそうです。ただ、インナーマッスルも鍛える彼が、「最強のインナーマッスル」と語るのが頭脳です。このように語っています。
「オススメなのが、歴史関係の読書。特に自伝や評伝は、筋トレ同様に絶対裏切りません。誰の人生もやはり面白いものだと謙虚になれますが、1冊挙げるなら吉川英治による長編小説『宮本武蔵』。超絶に素晴らしい内容なので、筋トレをやるような求道者なら、必ず励まされるはず。私も何かに迷うたびに、何度も読み返し続けてきました。これからも筋トレと歴史小説で身体の内外を鍛え、自分に勝ちましょう」
確かに、身体も頭脳も鍛えれば、“アフターコロナ”も何も怖くはなさそうです。
ロックバンド「クリープハイプ」のボーカル・ギターの尾崎世界観さんは、音楽の話をするのかと思いきや、「神宮で、ヤクルトの試合が見たい」と語っています。無観客試合を見ていて、スタンドの雰囲気が観戦の醍醐味であることに気付いたという尾崎さん。「毎年143試合も観せてもらっていたこれまでが贅沢だったんだと思います」というコメントには、深い愛情が感じられます。
お笑いコンビ「エレキコミック」のやついいちろうさんが挙げたのは「音楽」。音楽イベント「やついフェス」の主宰者としても知られる彼は、最近、サブスクで音楽をチェックする機会が増え、そこからピックアップした曲を自分のラジオ番組でかけているそうです。ただ、「やついフェス」は中止が決まり、
「音源も好きですが、僕は音楽を体験することが好きなんだというのが、今回のことで、よりくっきりわかりました。リモートでつながるのは楽ですが何か物足りない。楽ってのは楽しくないんですね」
と、感じているそうです。エンタメ業界はどうしても後回しになっているのが現実ですが、文化やエンターテインメントのありがたみが感じられたことは、せめてもの慰み。この状況を受け入れつつ、少しずつ前に進むことで、また新たな文化が生まれるのかもしれません。
◆ケトルVOL.54(2020年6月16日発売)
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