1998年のデビュー以来、常にJ-POPシーンの最前線を歩いてきたaikoが、2年9か月ぶりのアルバム『どうしたって伝えられないから』を3月3日にリリースした。これまで『カブトムシ』『花火』『ボーイフレンド』など、数々のヒット曲を生み出してきたaiko。作曲という作業は、“とことん自分を追い詰めるもの”というイメージがあるが、彼女はそれとはまったく無縁だという。2021年2月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.154で、こう語っている。
「(根を詰めることは)ほとんどと言うか、まったくないです。そういうやり方になったのは『ナキ・ムシ』(1999年)という曲がきっかけだったかもしれないですね。当時のプロデューサーに『自分の好きな曲を好きなように歌うのがいいんだよ』って言われたんですよ。
そのときは『自分の好きな曲ってどんなんやろう?』って思ったりもしたけど、じゃあ自分の直感を信じて、自分が楽しいものを形にしようと思うようになったんです。悩んで悩んで何カ月もかけて作った曲が意外と届かなかったりっていう経験もありましたからね。それ以来、そういう作り方は一切変わっていないんです」
そういった姿勢は、ポジティブな楽曲にも現れているようだ。ただ、音楽シーンは常に変化し、トレンドは日々更新されている。そういった現状をaikoはどう見ているのか?
「昔のヒット曲ってTVやラジオから生まれるものがメインだったじゃないですか。でも今は人それぞれ興味を示しているもの、好きなものがものすごく分散されていると思うので、流行の界隈がいろいろありますよね。その上、いろんな楽曲があるし、ジャンルもさまざまだから、数年前とはまた全然違った音楽シーンになっていると思います。
私はその界隈ごとにいろいろ聴くことで、『あ、こういうものもあるんだ』とか『こんなふうに歌うにはどうしたらいいんやろう』とかいろいろ感じることはあって。自分には絶対やれないことだけど、いちリスナーとしてすごいなって思うものもあったりするので、勉強になる部分もありますよね」
アーティストの中には、時代の変化に合わせてスタイルを変え、素晴らしい楽曲を提供し続けている者もいる。しかしaikoは、流行曲をチェックすることはあっても、それに影響されることはないという。
「私は自由に、好きなものを好きなように作っていいよっていうのが合ってるんだと思います。サブスクを解禁して、それぞれの曲がどんな比率でどんなふうに聴かれているかとか、ライブのチケットがどれくらい売れているとか、そういうこともできるだけ聞かないようにしていますしね。それを聞くと怖くなってしまうから」
時に、売れないことを時代のせいにする意見を見ることもあるが、「最終的には“自分がもっといい曲を作ったらこんな状況にはならなかったかもしれへんな”っていう思考に行きつく」と語るaikoには、そういった“言い訳”とは無縁のよう。そのような姿勢が、22年間、走り続けてこられた秘訣なのかもしれない。
◆『クイック・ジャパン』vol.154(2021年2月26日発売/太田出版)
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・クイック・ジャパン154-太田出版
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