大嶋賢洋による小説『帯広昭和革命1952』が、太田出版から7月29日(火)より刊行されます。
著者・大嶋氏が75歳にして小説家デビューとなる本作は、戦後の北海道・帯広を舞台にした、“かつてありえたかもしれない”戦後昭和秘史。カバーイラストは、著者と同じく北海道出身で『機動戦士ガンダム』キャラクターデザイン等を手掛ける安彦良和の豪華描き下ろしです!

戦後の混乱期、北の地の
「悪所」で、女たちの革命が起きていた――
舞台は1952年冬、北辺の街・帯広。色街の女たちは、自らを縛る不法な借金と、そのために身を売る不条理に抗い、反乱を起こす。この女たちの反乱に、様々な立場の男たちの陰謀が絡みつく。帯広革命都市宣言。侵攻する北朝鮮特殊部隊を阻止するため、地元の復員兵だった男たちは再び雪原で銃をとる。反乱の末に辿り着いた女たちが見たものは――。
大嶋賢洋による小説『帯広昭和革命1952』は、2025年7月29日(火)より全国書店やAmazonなどの通販サイト、電子書籍ストアで順次発売開始。四六判・390ページ。以下にあらすじもご案内します!
あらすじ
北海道・帯広市・1952年、物語は始まる。
明治期の開拓で、人工的に大規模農業を展開していた帯広は、戦争が終わり農地解放などもあり転換期を迎えていた。
北栄ビルで時計修理の店を営む中島直次は、樺太で作戦に従事していた卓越した狙撃兵で抑留後復員した。妻良枝は、喫茶店を経営する。
鈴蘭ビルは、青線地帯。非公認の売 春を行う店が客との自由恋愛を名目に売 春の提供をしている。女性たちのほとんどは、親の借金のかたに売られてきた。
ある日、青森から来たばかりの女が客を取らされることに抵抗し、追いかける男から逃げて鈴蘭ビルの屋根から転落し死亡する。
美術教師・吉田が講師となり、女たちの勉強会が始まる。吉田は、女たちを縛る借金の構造やその違法性を説き、女たちは徐々に意識が高まってくる。
女たちが青線に送られることになった借金には、その元締めである戸田興産だけでなく、その債券に関わるものは多数いる。そのさらにもとには東京の銀行もからんでいる。
女たちは、自分たちの現状の不当性を訴えるためデモも行い始める。「革命を起こす」ということばも飛び交う。デモは新聞にも取り上げられ全国に知られることになる。
借金に関わる面々にとってはまずい状況となってくる。彼女たちは赤の影響かと疑心暗鬼になる。東京の銀行からはさらなる儲け話が持ち込まれる。
女たちの意識は高まり、さらなる抗議運動を目指すが、一方で外部から寄ってくる勢力もあり、分裂が始まる。運動に関わろうとする北朝鮮系の活動家、共産党系の弁護士、その彼らは自分たちを見下していると感じる女たち・・・。
直次は妻の良枝が彼女たちと一緒に活動するのを、仕方なく支援していたが、その直次のところに公安の須藤が訪れ、直次の樺太時代の上司である宇部少尉のことを尋ねるとともに、女たちの活動は狙われていると警告する。
直次には、須藤から宇部が北海道に入り、北朝鮮の工作部隊のアジトに宇部の時計があったという情報も入る。何が起きようとしているのか?女性たちの活動に関わってきているのか?
再び行われたデモ。借金の棒引き要求、人権の回復を訴える。やくざが乱入するなど、いざこざがある中、活動の中でもリーダー格だった光子が頭を狙撃され死亡する。誰が彼女を殺したのか?
光子の死に女たちは動揺する。男は味方なのか敵なのか。女たちの運動は、厄介なものであると同時に利用したいものも出てきている。
死人が出たことで、借金の元締め側にも動揺が走る。女たちを脅せと言ったがやくざが暴走したのか?
直次は、弾道などから戸田興産のやくざではない狙撃が別のプロによっておこなわれたと見抜く。ではどの勢力が。直次は何としても女性たちを守ると決意する。
今度は戸田興産が放火され延焼する。女たちの復讐とみる声も。
そんな時、宇部少尉の命令書が直次に届く。
現れた男たちは、ソ連でともに司令官として行動することを要求する宇部の言葉を伝える。直次は聞く「光子を殺したのはあんたたちか? 戸田興産の火事は?」否定する男たち。そこに女たちの終結場所である劇場が燃えていることが知らされ、直次は飛び出す。
女たちは決然と「暴力には屈しない」という声明を発表する。
事がどんどん大きくなっていくことで、男たちのあいだでも仲間割れが始まる。
町のものの中には、直次が町の上層部とつながっていることを疑うものも。
宇部からは樺太で作戦指揮経験もある直次に、期待する伝言。直次は乗らない。
俺はこの街の女たちを守る!
第二次世界大戦直後、朝鮮戦争がはじまり、暗躍する北朝鮮工作員、北朝鮮、中共を背後からの支援を企図するソ連とソ連で共産主義思想教育を受けた男たち。帯広で起きた女性たちの「革命運動」を軸に、それぞれの勢力からの介入、だましあい、団結、疑心暗鬼が渦巻く北の大地の物語。女たちは権利を勝ち取れたのか――