グランツーリスモ開発者 「目指しているのはリアルではなくリアリティ」

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1997年の発売から、多くのゲームプレイヤー、そしてカーマニアを唸らせてきた『Gran Turismo(以下GT)』シリーズ。「実在する自動車を登場させる」「現実の自動車の動きに限りなく近い挙動」といったこだわりの要素は、根っからの車好きであるゲーム開発者・山内一典さんが考案したものです。

実際の制作期間に入った時、山内さんはゲーム開発史上初となる物理シミュレーションの導入を決意します。求めるのは従来のレーシングゲームのようにスムーズな挙動ではなく、実際に運転する時の自動車の動きに限りなく近づけることでした。

「まずはリアルな挙動が第一優先。そして、リアルな挙動に見合うためのビジュアルも重要でした。自動車の形って内部構造にも影響を受けるので、スケッチだけだと存在感が出ないんですよね。本気で生産するつもりで作らないと、説得力がない。メーカーサイドには、本当に生産するつもりでデザインいただくようお願いしています」

一方で、美しいレース環境にもこだわりがあります。山内さんは車体の反射や、道路を照らす光の美しさを特に重視します。

「GTのレースシーンでは、道路に綺麗に西日が射してくる状況などがあります。ですが、実際の自然界ではそう簡単に起きない現象をあえて起こしていることが多いんです。理想的な空模様や、光によってどう影を落とすか。そのありえない状況をいつでも作れることがゲームのいいところだと思っています。

車体へのこだわりもそうですが、僕らが目指しているものって、リアルではなくリアリティなんです。完全に本物と同じだからリアルで没入できるわけではない。視覚や聴覚を通じて入ってきた信号に対し、脳が興奮するところに可能性があると思っています。リアリティのある本物を追求していきたいんです」

自身がシリーズを積み重ねる上で、やっと納得できるクオリティに達したと感じたのはここ10年程の話だとのこと。2018年にはFIA(国際自動車連盟)と合同による世界選手権「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ」も開催。まさに、バーチャルがリアルの垣根をどんどん越えていっているのです。

◆ケトルVOL.51(2019年12月17日発売)

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ケトル VOL.51-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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