喧嘩芸の生みの親は千原ジュニア? 鬼越トマホークが語る「喧嘩芸はジュニアさんの作品」

鬼越トマホークの弱者のビジネス喧嘩術

お笑いコンビ・鬼越トマホーク初の公式書籍『鬼越トマホークの弱者のビジネス喧嘩術』(太田出版)が、2025年9月29日に発売! YouTubeチャンネル登録者50万人を突破した鬼越トマホークが、二度の解散と再結成を乗り越え、激しい衝突の末に辿り着いた「コンプレックスの受け入れ方」「負けることの格好良さ」、そして逆張りを個性とする「弱者の戦術」――。

鬼越トマホークの殴り合いの大喧嘩が芸になった「喧嘩芸」。その生みの親は、お笑い界の鬼才・千原ジュニアだった!

鬼越トマホークと千原ジュニア。『鬼越トマホークの弱者のビジネス喧嘩術』には3人の対談も掲載されている。

千原ジュニアの「逆転の発想」

 千原ジュニアは、お笑い界の鬼才として知られる。1974年、京都生まれ。兄・千原せいじとコンビ「千原兄弟」を結成し、大阪NSCの8期生として入学する。90年代前半には早くも頭角を現し、全国区での活躍を始めた。千原兄弟は緻密に構成されたコントで高く評価されており、ネタ作りはジュニアが担当している。ジュニアのお笑いへのこだわりは強く、テレビ番組に企画段階から関わることも少なくない。

 喧嘩や暴言といった本来なら問題視される行動を、ジュニアは価値観を転換させることで鬼越トマホークの個性を活かした芸へと昇華させた。ジュニアとの邂逅、そして喧嘩が「芸」になった瞬間を振り返る。

金ちゃん ジュニアさんは、俺らが先輩に放った暴言について、「意外と芸人の指針になってること言ってるんちゃうか」「じゃあ、誰か芸人が止めに行ったら、ちょっとおもろそうやな」とラジオで話をしていたんです。そこから、『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京)の企画「鬼越トマホークの喧嘩を止めよう!」が生まれました。

 初めてオファーをもらったときは、番組スタッフさんも半信半疑でしたね。「なんだか喧嘩したらしいですね」と言われて、どこかバカにされているような雰囲気すらありました。誰が来たら何を言うか、一問一答の形でスタッフさんとネタを作りましたね。「どうなるかはわからないけど、とりあえず一度やってみましょう」といった、手探りの状態で企画がスタートしました。

 ジュニアが企画から携わっている番組は数多くあるが、『ざっくりハイタッチ』もそのひとつだった。2014年8月に起きた鬼越トマホークの大喧嘩から、『ざっくりハイタッチ』の「鬼越トマホークの喧嘩を止めよう!」が11月にオンエアされるまで、わずか3カ月。ジュニアがいかに迅速に企画を立ち上げたかがわかるだろう。

良ちゃん だから僕らは、喧嘩芸はジュニアさんの作品だと思っています。ある意味、ジュニアさんがした「逆張り」ですよね。だって、先輩・後輩の上下関係が厳しいっていうのは、ジュニアさん自身がよくわかっているはずじゃないですか。でもジュニアさんは、そこをあえて逆手に取った。「これ、ちょっとおもろいんちゃうか」って考えてくれたんです。「あいつらの喧嘩を止めるのが、芸歴が20年上の大先輩だったら、ひょっとしておもろくなるんじゃないか」と想像力を膨らませながら。これが、喧嘩芸のきっかけになったんです。

金ちゃん ジュニアさんには直接伝えましたけれど、僕らがスーパーマリオだとしたら、ジュニアさんは任天堂です。

良ちゃん それは自分たちを良く言いすぎですけどね。僕らが今こうして飯を食えてたり、結婚できてたりするのも、正直言って全部ジュニアさんのおかげですね。あの最初のきっかけがなかったら、どうなってたかなんて考えたくもないです。

 それに、僕らは別に努力家ってわけじゃありません。今の若手みたいにネタをストイックに突き詰めていくタイプでもないし、あのまま何かやらかして本当にクビになってた可能性もある。

金ちゃん 何とか活動できていても、食えてなかったら解散の可能性はありました。そもそも、あの喧嘩で、「もう解散だな」ってなっていたんです。

良ちゃん 普通の会社でやったら、あんなの100%クビですよね。喧嘩が終わって、もう30分後くらいには「やってしまった」って思いましたよ。

 鬼越トマホークは毒舌のイメージが強いが、実際に会ってみると2人とも礼儀正しい。特に金ちゃんは学生時代に野球部に所属していたこともあり、体育会系の礼儀やコミュニケーションがしっかりと身についている。

良ちゃん 謝らないとか、そこまで尖ってないです。感覚は普通の人間なので。まあ、礼儀はなっていなかったのかもしれないですけど、それなりに先輩にはちゃんと挨拶していましたね。その文化を、押し付けられてはいましたが。

金ちゃん 本当に軍隊みたいなんで、喧嘩をやらかした瞬間に「これはまずいな」と思いました。すぐに2人で全員に謝りに行きました。

良ちゃん 「もうおしまいだ」と思いながら謝りました。でも、先輩たちもすぐに許してくれる感じではなかったです。だからこそ、「あかんやつらがいる」って噂が広まったんじゃないですか。今はいろいろな芸人がいますけど、当時の吉本の上下関係の中では、許されない行動でした。

金ちゃん これは噂なんですけど、当時その話が西の方にまで広がってて、かまいたちさんが「なんちゅう後輩がいるねん」と、ちょっと怒っていたなんて話を聞きました。それくらい、あの喧嘩は吉本全体で大事件になっていましたね。

第3回「「人を活かす笑い」としての喧嘩芸――他の芸人を介することで笑いの幅を広げるブランディングとは?」(10月21日更新)に続く

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『鬼越トマホークの弱者のビジネス喧嘩術』
著・鬼越トマホーク
構成・石川嵩紘

お笑いコンビ・鬼越トマホーク初の公式書籍『鬼越トマホークの弱者のビジネス喧嘩術』が、2025年9月29日に発売となります。YouTubeチャンネル登録者50万人を突破した鬼越トマホークが、二度の解散と再結成を乗り越え、激しい衝突の末に辿り着いた「コンプレックスの受け入れ方」「負けることの格好良さ」、そして逆張りを個性とする「弱者の戦術」。

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「コンプレックスから逃げずに受け入れてきたからこそ、ずっと一緒にいられたし、それをネタとして消化してきたんです」(金ちゃん)

「弱いからこそ、喧嘩芸が成立するのかもしれない。これは、完全に『弱者の戦術』なんです」(良ちゃん)

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