雑誌『ムー』 創刊直後の廃刊危機を免れた大胆な「方向転換」

スポンサーリンク

1979年の創刊以来、数々の謎と向き合ってきた雑誌『ムー』は、もともと中高生向けに発売されていた「コース」という雑誌から生まれたもの。すでに39年も続いている同誌ですが、発売当初にいきなり廃刊の危機に晒されています。

学年誌がルーツにあることから、UFOや超能力についてわかりやすく解説する記事のほか、『デビルマン』などの人気マンガ家・永井豪さんのアクション漫画やSFアニメに関する記事も掲載していた同誌。当初はあくまでも中高生向けの「総合エンターテインメント雑誌」という位置づけだったのです。

しかし、事前の期待と違い部数は低迷。出版業界には創刊後すぐに潰れる「3号雑誌」という言葉がありますが、『ムー』も同じ運命をたどるのではないかと心配されたほどだったそうです。創刊からちょうど1年が経過した1980年10月、『ムー』編集部は大幅な路線変更を決断します。

このまま同じことを続けても、10代の読者も、大人の読者も獲得できそうにない。そもそもUFOや超能力に興味を持つ中高生は、ちょっと背伸びして大人の世界を垣間見たいという思いもあるから、中高生向けという括りを捨てたほうがいいのではないか―。

そうした考えのもと、芸能やアニメの記事をやめ、「読ませる特集」を新機軸としたリニューアルを実行。超常現象をわかりやすく解説するよりも、大胆な仮説を立て、徹底的に謎を追求する「ノンフィクション・ミステリー」というスタイルを打ち出しました。

創刊号と路線変更後である1982年2月号の誌面を比べると、この短い期間でいかにターゲットを変えたかよくわかります。創刊号では図鑑のようにわかりやすく異星人の種類を解説していますが、路線変更後はまだ一般にはほとんど知られていなかった粒子「ニュートリノ」について詳細に解説。科学専門誌も顔負けの読み物が中心となりました。すると部数が大きく伸び始め、1982年には念願だった月刊化も実現。ここから『ムー』の歴史は本格的に始まったのです。

◆ケトル VOL.43(2018年6月15日発売)

【関連リンク】
ケトル VOL.43(ムー特集号)

【関連記事】
千鳥ノブの必殺ツッコミ「クセがすごい」はどうやって生まれた?
感動ポルノはどこからくる? Eテレが挑戦した規格外の徹底企画
注目女優・黒木華 演劇部に打ち込んだ高校時代は恋愛ゼロ?
たまごかけご飯の正しい食べ方 「先にごはんに醤油」説登場

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品
ケトル VOL.43
太田出版