6月20日、理化学研究所と富士通が開発中のスーパーコンピューター(以下「スパコン」)『京(けい)』が、スパコンの計算速度で世界1位となった。『京』は、総予算約1120億円の国家プロジェクトだったが、そのスパコンを09年にたった3800万円で作ってしまったのが長崎大学の濱田剛准教授。通常10~100億円の開発費がかかると言われているスパコンを100分の1ほどのコストで作り上げた彼は、格安スパコン『DEGIMA』作成の動機をこう語る。
「従来のスパコンは開発費が高すぎて、使用できるのは学者や大手のメーカーなどトップ1%の人に限られていました。でも、『もしも安いスパコンが作れたら、もっと実用シーンで使われるのでは』と思ったのが、このスパコンを作ったきっかけでした」
濱田さんは、部品をゲーム機やPCの部品などの既製品から用いることで低価格化を実現。設計図に合わせ、各メーカーの部品を組み合わせていく試行錯誤を約2年間繰り返した結果、09年に『DEGIMA』が完成した。
ところで、スパコンを使うと一体どんなことができるのか? 濱田さんは、「スパコンは一般にはなじみが薄いと思いますが」と断った上で、こう説明する。
「スパコンを使えば、複雑なシミュレーションが安易にできます。例えば、車の開発には、安全確認などのため膨大な台数の車を使ってのテストが必要だったのが、スパコンによるシミュレーションを使えばコストが大幅に減るはずです」
これにより、資本力のないベンチャー企業でも開発に乗り出すことが可能となり、車以外にも、太陽電池や新薬開発など、応用例は計り知れないそうだ。
◆ケトル VOL.01(6月14日発売/太田出版)
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