食パンを口にくわえてダッシュする、遅刻しそうな少女。略して食パン少女。昔から少女漫画のお約束シーンとされるこれ。よくある設定としては、「大慌てで全力疾走する食パン少女が、曲がり角で男子にぶつかり軽い言い争いになる。それでもギリギリセーフで教室にたどり着くと、さっきぶつかった男子が転校生で・・・」みたいなパターンが想像されるが、実はこのシチュエーション、少女漫画には実在しないという説がある。
少女漫画が大好きで、1960年代の新旧少女漫画、少女小説に造詣が深いお菓子研究家の福田里香さんによれば、「60~70年代のラブコメ系少女漫画群を機会があるたび読みあさっているのですが、どうも該当作がないんですよね。周辺の漫画好きの方々に聞いても、これだ!といった作品が出てこないんです」とのこと。
そんななか、福田さんが今のところ初出認定しているのが、1989年発刊、相原コージと竹熊健太郎の『サルでも描けるまんが教室』だ。
「私が知る限りでは、この本で初めて、ハッキリとした”食パン少女”が登場しています。ただし、すでに少女漫画にありがちな出会いパターンという扱いで紹介されているんです」(福田さん)
元ネタよりも先にパロディがあるという不思議な食パン少女。そして食パン少女を完璧にお約束に仕立てた作品として福田さんが挙げるのが、あの『エヴァンゲリオン』。遅刻寸前の綾波レイが食パンダッシュを行い、シンジくんにぶつかるというTV版の第26話に登場するシーン。ちなみにここでは食パン少女の綾波レイの方が転校生で、さらにいえば、シンジくんの妄想のなかという設定になっている。
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