「モテ=フェロモン」説に終止符 人間にフェロモンを感知する器官なし

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12月15日発売の雑誌『ケトル』は、特集のテーマとして「学者」をピックアップ。「火星のレントゲン写真」「働かない働きアリ」「不老不死」「好かれる匂い」など、興味深い研究に取り組んでいる学者と、その研究成果を紹介している。今回紹介するのは、「フェロモン」について。東京工業大学大学院の廣田順二准教授は、「フェロモンに気づく仕組み」について研究しています。

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顔は全然好みじゃないけど、わけもなくその人に惹かれてしまう! そんなとき、人はその恋心を「フェロモンのせい」などと評するものだが、廣田先生によれば、「実は人間にはフェロモンを感知する器官はない」のだという。マウスを使った実験で、「フェロモン分子を感知する神経細胞の生成メカニズム」を解明した廣田先生。ところで、そもそもフェロモンって何なんですか?

「フェロモンは動物の体から分泌されるもので、性行動・縄張り行動・子育て行動などの動物の本能的な行為を誘導する大切な要素。動物同士が出会い頭に鼻をくっつけあったりしますよね。動物の鼻はたいてい粘液で濡れていますから、あれは実はお互いのフェロモン情報を交換しているんじゃないかと言われています」

動物は鼻の中にある鋤鼻(じょうび)器という器官で探知するものの、人間はその器官が退化しているため、フェロモンを感知できないと考えられているのだとか。ということは、人間が誰かに惹かれる時は、完全に見た目や声など、五感に頼っているのだろうか?

「一概には言い切れません。これは海外の研究ですが、脇の匂いなどの体臭に対し、同性のものだと『臭い』としか思わないのに、異性だと『興奮する』『魅力的』と認知された実験もある。人間の場合、鋤鼻器以外のどこかで、相手のフェロモンを探知している可能性も。事実、人間にもフェロモン受容体遺伝子は残っていますし」

器官自体は退化しても、もしかすると別の場所でフェロモンをキャッチしているのかも。なお「フェロモン」というと、とかく性的なものをイメージしがちだが、自然界では、危険を仲間に知らせる警報フェロモン、仲間の集合を促すフェロモンなど、実は色々な種類が存在するそうだ。

◆ケトル VOL.010(12月15日発売/太田出版)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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