不漁続きで年々値段が上がり、「近い将来、食べられなくなるのでは……」と危惧されてきた「ウナギ」。これまで日本で一般的に食べられてきたのは、天然モノの稚魚を捕獲して育てた養殖ウナギで、その稚魚自体の漁獲量が激減したことが価格高騰の原因だったが、近年、その打開策が生み出されつつある。
天然モノの稚魚が採れないならば、卵から成体を育ててしまえばよいのでは?──この長年の疑問に終止符を打ったのが、独立行政法人水産総合研究センターのウナギ研究グループだ。研究グループは、2002年に人工の仔魚をシラスウナギ(稚魚)に変態させるという世界初の試みを達成し、2010年には人工ウナギの卵から次世代を誕生させる完全養殖に成功。そして人工ウナギの大量生産に向けて、昨年ついに大型水槽で卵からシラスウナギまで育てることに成功したのだ。
これが実用化されれば、天然のシラスウナギに頼らずとも、自由にウナギを養殖できるかもしれないというワケ。研究グループの増田賢嗣氏はこう語る。
「ウナギの仔魚を育てる上で欠かせないのが、水槽交換です。同じ水槽をずっと使用したまま飼育すると、水中に細菌が増え、仔魚が死んでしまいます。すでに水槽交換が簡単な10リットル前後の小型水槽では、仔魚からシラスウナギに変態させることには成功していましたが、このサイズの水槽では大量生産するには手間がかかりすぎる。実用化を目指すなら、どうしても大型水槽を使用する必要があったんです」
特許出願中のため、現時点では水槽の形状は口外不可能だが、大型水槽での飼育方法が確立されれば、ウナギは卵から完全養殖できるようになるはず。しかし現在、もうひとつの課題を抱えていると増田氏は続ける。
「次なる課題はシラスウナギのエサですね。現在シラスウナギの生産には、ピンポン玉サイズのサメの卵を原料にして作ったエサを使用しているんですが、サメの卵は非常に貴重でコストがかかってしまうので、あまり実用的ではないんです。ほかにも鶏の卵や魚粉などで代用できないかと試してはいるものの、なかなかいいエサが見つかってないんですよね……」
逆に言うと、この問題さえクリアになれば、ウナギが安定供給される時代が近づいてくるということ。日本全国のウナギファンの皆さんは、ぜひとも楽しみに続報を待つべし!
◆ケトル VOL.18(2014年4月15日発売)
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