犬派と猫派──日本中の動物愛好家の間でたびたび論争を巻き起こすこの派閥争いですが、猫派の人も思わず、「犬ってすごい!」と感じずにはいられないのが、京都大学の藤田教授チームが発表した「犬は飼い主に非協力的な人を嫌うのか?」という研究。「犬は自分の飼い主に対してイジワルな人を見ぬくのか?」を研究しました。
実験では、犬の前で飼い主が作業をしているとき、周囲の人間が飼い主に対して「協力する」「協力しない」「なにもしない」という3パターンの行動をとった場合、犬の行動が変わるのかを調査。なお実験は、生後7か月から14歳まで幅広い年齢の犬54頭をグループにわけて実施されました。
実験は、まず飼い主に犬の前で箱のフタを開けようとしてもらい、飼い主の両脇に2人の人間を配置。「1人は協力するが、もう1人はなにもしない」「1人はなにもしないが、もう1人は顔をそむけて拒否する」などの行動をとってもらいます。
そしてその後、飼い主以外の2人が用意していたエサを同時に差し出した場合、犬がどちらからエサをもらうか観察すると、「飼い主に協力しない人」がいたグループでは、「協力しない人」からはエサをもらわず、「なにもしなかった人」からもらうという結果が出ました。つまり「飼い主に協力しない人=飼い主にイジワルな人」には、犬はすぐに拒否反応を示すという推測が成り立ちます。
「これまで自分に利害がなくとも、他者に不親切な存在を嫌うという感情を持つのは、人間以外の動物ではフサオマキザルなど一部のサルだけだと考えられてきました。ただ、この研究から、犬も同じような感情を持つと考えられます」(藤田教授)
長年、「犬は人間の感情がわかる動物」と言われてきましたが、この研究により、その言葉が科学的にも実証されたともいえます。藤田教授は猫にも同じ実験を行なうつもりだそう。猫は、犬に比べて自由奔放な印象がありますが、はたして犬のように飼い主の感情を察してくれるのか……、実験の結果次第では、猫派から犬派に宗旨替えする人も現れそうです。
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