お笑い芸人のつぶやきシローが、前作『イカと醤油』以来5年ぶりとなる小説『私はいったい、何と闘っているのか』を上梓した。同作は、中規模スーパーで主任を務めながら、小さな七転八倒の人生を送る中年男が主人公の作品だが、つぶやきはこの作品をどう感じているのか? 現在発売中の『クイック・ジャパン』vol.128で、つぶやきはこう語っている。
「(前作には)結構あるあるネタが入ってたりギャグが入って横にそれたり、コント色が強いですよね。だって何書いていいかわからなかったんですよ。それで気負っちゃって、詰め込みすぎちゃって。行間とかの間を埋めるのも、恥ずかしくて笑いを入れたくなっちゃって。それが『無理に笑いを入れなくていいんだ』ってなったのが今回」
スーパーの万年主任の“春男”を主人公にしたことについて、「報われない人を書きたいっていうのは頭にあって、そこから始まりました」と語るつぶやき。彼自身も「私はいったい、何と闘っているのか」と思うことはあるのだろうか?
「結構ありますよ。無駄なことばっかり考えて。全く結果が出ないことを。普段のスタジオ収録しているときも『ブイ見てこういうこと言おう』『振られたらこう突っ込めるな』とか頭グルグルになってるのに『ああ他の人が言っちゃった』とか『そもそも振られもしなかった』とか。でも平然とした顔してる」
そんなつぶやきは、もともと“つぶやき芸”で世に出たが、新作についても、
「出版社の人は『いいですね』ってそりゃ言うよね。でもそれあんま真に受けちゃいけないし、最終的には『こういうのは初めてです。いい意味で読んだことがない』とか言い出して、それって感想を聞かれて困ってる人がいうセリフだよな~と」
と、独特の“つぶやき節”で解説している。前作は「売れなかった。三村さん(さまぁ~ず)は面白いって言ってくれたけど」ということだったそうだが、哀れみを笑いに変え続けてきた男の小説は、一読の価値はありそうだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.128(2016年10月24日発売/太田出版)
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