人間社会というのは不公平なことだらけ。ところが恩賜上野動物園のハダカデバネズミの巣を見ていると、動物界も不公平なことだらけのようです。
ハダカデバネズミは、毛のない肌を持ち、穴を掘って地中で暮らします。寝室や貯蔵庫など、各部屋をトンネルでつなぎ、常に移動しながら、せっせと働きます。この巣がひとつの社会になっているのです。
ハダカデバネズミは、家族集団(コロニー)をつくり、階級社会(カースト)を持ちます。カーストは頂点から女王ネズミ、繁殖オス、兵隊、雑用係と分かれており、繁殖は特定の個体に限られています。
女王ネズミは、群れを支配している1頭のメス。女王だけが子どもを産むことができます。サボっている個体がいると催促してつつきます。体の大きさのわりに長生きします(約20年)。繁殖オスは、繁殖に関わる2~3頭のオス。女王の次に体が大きいのですが、繁殖活動によって痩せてしまいます。
兵隊ネズミは、外敵から群れを守る数頭のオスとメス。残念ながら動物園では仕事がありません。最後の雑用係は、エサ集め、トンネル掘り、巣の掃除、子どもの世話などを行う多数のオスとメス。一番働いています。このような集団の性質を「真社会性」と呼び、アリやハチなど昆虫で主に見られますが、哺乳類ではハダカデバネズミとダマラランドデバネズミの2種類だけで、とても珍しいとされています。人間社会はもっと複雑ですが、身につまされている人もいるはずでしょう。
ただ、ハダカデバネズミの階級は、体の大きさや能力によって途中で変わることもあるらしく、実力によって、上にあがることもできる能力社会でもあるとのこと。人間社会も見本にしたいもの。そんな希望を胸に抱えながら観賞するのも一興ではないでしょうか。
◆ケトル VOL.33(2016年10月14日発売)
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