三国志マニア芸人のやついいちろうが語る「横山三国志」の魅力とは?

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名前だけは聞いたことがあるものの、その大作ぶりに食わず嫌いな人も多い横山光輝の『三国志』。そこで三国志マニア芸人のやついいちろうさんに、その面白さをレクチャーしてもらいました。

自称・芸能界一の三国志マニアであり、全国の三国志ファンが受験する「三国志検定」にも合格しているのが、エレキコミックのやついいちろうさん。そんなやついさんが「横山三国志」に初めて出会ったのは、小学5年生の頃でした。

「お金持ちの友達の内田君が持っていたパソコンゲームの『信長の野望』にハマって、同じ光栄さんが出した『三國志』も遊んだんです。ただ、全然物語が理解できなくて。『信長』は戦国時代の歴史を授業で習うから何となくわかるけど、『三國志』はゲームとしては面白いのに、中国の歴史がわからない。どうしようと思っていたら、その内田君が、横山光輝の『三国志』をそろえていたんです。それで読み始めたら、徐々にハマっていきました」

少年マンガは『ジャンプ』世代のやついさんにとって、「横山三国志」は大人のマンガに感じられたそうです。

「これも本当は少年マンガなんですけどね(笑)。題材は中国の歴史だし、『ジャンプ』のマンガに比べると絵がシンプルで、あまりにもサービス精神がないから、『これが大人のマンガか』と思いながら読んでいました。最初は正直、読みづらいと思ったんですけど、序盤を乗り越えたあたりから面白くなってきて、そこからは一気に読みました」

やついさんが「横山三国志」に惹かれた理由は?

「僕は劉備のファンで、魅力がよくわからないところが好きなんです。例えば、織田信長ってわかりやすく天才じゃないですか。才能があって、頭も切れる。誰でも『ここがすごい』って言いやすい。でも劉備は魅力が曖昧です。

腕力は強くないし、戦争でも負けてばかり。特に努力もしないのに、そのくせ理想が高くて正論ばかり言う。取り柄といったら血筋がいいことだけ。普通はヒーローとして失格な人物ですよ。それなのに、次々と劉備を慕う人が集まってくる。そこが不思議すぎて、すごく興味があるんです」

それは同じ『三国志』を題材にしたマンガで、曹操を主人公とした『蒼天航路』と比べるとわかりやすいかもしれません。同作では曹操という傑出した天才が、その才能をいかんなく発揮して乱世を席巻する過程を描いています。

「『蒼天航路』は面白さがわかりやすくて刺激的です。だから女性からも人気があるんですけど、刺激が強いから、ずっと噛んでいられない。反対に劉備が主人公の『横山三国志』は、噛んでも噛んでも魅力がよくわからないんです。だから飽きない。

『横山三国志』の劉備みたいな人って、現実でもいるじゃないですか。才能がよくわからないけど、なぜか人気がある。一方ですごく器用に何でもできる人がパッとしないことがある。つまり、『横山三国志』には『人間の魅力とは何か?』ということに対するヒントがあると思っているんです」

◆ケトル VOL.37(2017年6月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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