テレビとラジオの最大の違いは、テレビには「映像」「音声」という2つの武器があるのに対し、ラジオには「音声」しかないこと。しかし、それは必ずしもラジオのほうが劣っているということを意味するわけではなく、パーソナリティが言葉を駆使して情報を伝える力は、時に映像の力を凌駕することがあります。ところがそんな“常識”を完全に破壊したのが、“コサキン”でした。
「意味ね~、くだらね~」──そんなフレーズを合言葉に、小堺一機と関根勤の“コサキン”が独特の世界観を作り上げた『コサキンDEワァオ』。タイトルや時間帯を変えながら1981年から2009年まで放送されたTBSラジオの長寿番組です。
ひたすらに「意味のない面白さ」を追求し続けた同番組を象徴するのが、ラジオなのにリスナーから「写真ネタ」を募集していたこと。しかもコサキンはそれがどんな写真なのかほとんど説明せず、ただスタジオで爆笑するばかりです。
これにはゲスト出演した明石家さんまですら、「ラジオでわかれへんやないか」と突っ込んでしまったほど。1986年6月4日の放送回にゲスト出演した明石家さんまが言い放った「写真ネタやめい!」は番組を代表する名台詞となり、後に写真ネタを扱うコーナー名に採用されました。
それでもコサキンはこの路線を貫くことで人気番組となったのですから、数々の芸人が番組を担当してきたTBSラジオの中でも、かなり異端な存在であったことは間違いありません。凡人なら、写真の面白さを伝えることに心を砕くところですが、それをなかば放棄した逆転の発想が、勝利を呼び込んだようです。
◆ケトル VOL.39(2017年10月16日発売)
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