ジャッキー・チェンとブルース・リー 香港映画2大スターの対極的な魅力

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誰にでも憧れの人は必ずいるもの。世界的スター・ジャッキー・チェンにとっての憧れの人は、香港映画界の最初の世界的アクションスターであり、32歳で夭折してからは伝説になったブルース・リーです。ジャッキーはリーについて、「彼がいなかったら、ジャッキー・チェンの名だって知られることはなかっただろう」とその偉大な功績を讃えています。

リーは中国の功夫(カンフー)を独自に発展させた「截拳道(ジークンドー)」により、アクション映画に革命をもたらしました。極限まで鍛え抜かれた肉体を活かして、誰も見たことがないようなパワフルな格闘をする。世界中の観客がリーの映画を観るなり、「自分もああなりたい!」と思い、モノマネをしたり、実際に格闘技を習ったりする人が続出しました。

ジャッキーは駆け出し時代、リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』『燃えよドラゴン』にスタントマンとして出演。リーの仕事ぶりを間近で見て、アクション以上に、映画製作そのものについて多くのことを学びました。

特に影響を受けたのは、映画全体をコントロールしようとする完璧主義です。監督はいるものの、実質的な主導権はリーが握り、アクションの振り付けから、カメラアングルの指定まで、すべて自分で決めていたそうです。だからブルース・リーの映画は、どれもがほかの人には絶対に作れないオンリーワンの美学に貫かれています。

ジャッキーも自身の映画で監督や武術指導を兼任することが多いですが、それはリーを見習ってのこと。しかし、映画の内容についてはリーの対極を選びました。ブルース・リーを「観客があこがれる超人」とするなら、ジャッキー・チェンは「観客が共感できる小市民」を目指したのです。敵を次々になぎ倒していくスーパーマンではなく、悩んだり苦しんだりしながら、なんとか問題を解決していく普通の人。それがジャッキーの演じてきたキャラクターです。

ブルース・リーの影響力はあまりに大きく、彼の死後には多くのフォロワーが生まれました。しかし同じことをやっている限り、リーを超えることはできない。そう考えたジャッキーは、「次のブルース・リー」ではなく、「最初のジャッキー・チェン」を目指すことで、自分もリーのようなオンリーワンのスターとなったのです。

◆ケトル VOL.40(2017年12月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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