「北の国から」風に同じキャストに長年密着した海外の名作2選

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国民的な話題になったドラマは数あれど、『北の国から』の最大の特徴といえば、なんといっても同じキャストで20年以上も制作を続けたところ。特に純と螢の成長が、それぞれの役を演じた吉岡秀隆さんと中嶋朋子さんの成長とシンクロすることで、本当に黒板家が富良野にいて、彼らを見守っている錯覚に陥ります。だからこそ純と螢が大人になったとき、私たちは五郎(田中邦衛)のような気持ちで心の底から感動してしまうのです。

もし、「こんな感動をもっと味わってみたい!」と思ったら、ここで紹介する名作たちがおすすめ。というのも、これらの作品はすべてフィクションでありながら、「北の国から」のように同じキャストを何年も追い続け、彼らの変化を取り込むことで完成させたものだからです。

もっとも有名なのは、フランスを代表するフランソワ・トリュフォー監督による「アントワーヌ・ドワネルの冒険」と呼ばれる作品群。ジャン=ピエール・レオが演じたアントワーヌ少年が大人になるまでの20年間を追ったシリーズで、いずれも映画史に燦然と輝く名作ぞろいです。

こちらはトリュフォー監督がデビュー作『大人は判ってくれない』から断続的に撮り続けたシリーズで、アントワーヌ少年の12歳からの20年間を一貫してジャン=ピエール・レオが演じました。反抗期を描いた『大人は~』以降の内容はフランス映画らしく、そのときどきの恋愛模様が中心ですが、トリュフォーの実体験が物語に反映されていくことで、作品を追うごとにジャン=ピエール・レオの顔がどんどんトリュフォーそっくりになっていくところに注目です。

あるいは、あるカップルの18年間を3部作で制作した「ビフォア」シリーズ。初めはピュアな恋愛ものだったのが、結婚し、子供が生まれ、倦怠期へ……という展開を見せていきます。『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督による3部作で、ジュリー・デルピー演じるフランス人の女学生とイーサン・ホーク演じるアメリカ人学生が出会う1作目、再会する2作目、結婚し子供もいる3作目が、それぞれ9年ごとに制作されています。同じキャストの18年間というだけでなく、映画内時間がすべて1日に収められている点も特徴で、観客が会話の中から2人の過去を推測できる巧みな構成が高く評価されました。

どちらのシリーズも監督やキャストが制作中の何年もの間に実際に体験したエピソードを踏まえて物語が考えられています。それが映画にフィクションを超えたリアリティを与えており、「北の国から」の人々を見守るような気持ちで、彼らの変化から目が離せなくなっていくわけです。

◆ケトル VOL.41(2018年2月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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