まるでリアル「北の国から」 山奥で暮らす夫婦を25年追ったドキュメンタリー

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1981年に放送がスタートし、2002年の「遺言」まで、実に20年以上も続いたドラマ『北の国から』は、五郎(田中邦衛)の2人の子ども、純(吉岡秀隆)と螢(中嶋朋子)の成長が物語とリンクするリアル感が人気の大きな理由でしたが、ストーリー自体はもちろん創作です。ところが、自ら山奥に住む場所を切り拓き、自給自足に近い生活を何年も続ける──そんな五郎のような生活を本当に送っている夫婦のドキュメンタリー映画が2016年に話題となりました。

それが山口県のローカル局・山口放送が制作した『ふたりの桃源郷』。山口県岩国市美和町の山奥で暮らす田中寅夫さん・フサコさん夫妻とその家族を25年間2世代にわたって追い続けたテレビ番組の劇場版です。

田中さん夫妻が電気も水道もない山中で暮らす理由は、かつて戦争で家を失った際、一からやり直すために自分たちの手で切り拓いた大切な場所だから。一時期は子供たちの将来を案じて山を離れたことがあったものの、還暦を過ぎたとき、余生を思い出の地で過ごすことを決めたそうです。

便利ではないけど幸福そうな老夫婦の姿、離れて暮らす子供たちの葛藤、そして2人の死を通じて、現代の家族のあり方を問いかけた同作はテレビ放映時から反響を呼び、多くの賞を受賞。劇場版も全国各地で1年以上も上映されるロングラン作品となりました。しかも劇場版はナレーションを吉岡秀隆が担当。まさに“リアル版・北の国から”といえる同作は、「北の国から」のファンならずとも観ておくべき映画といえそうです。

◆ケトル VOL.41(2018年2月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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