主人公の「僕」(柄本祐)と友人の静雄(染谷将太)、そしてふたりと関係を持つ佐知子(石橋静河)の3人のひと夏の青春を描き出す映画『きみの鳥はうたえる』が、現在公開されている。同作は、佐藤泰志が1982年に発表した小説を映画化したものだが、札幌出身の映画監督・三宅唱は、今作で何を表現したかったのか? 2018年8月21日発売の『クイック・ジャパン』vol.139で、三宅はこう語っている。
「生活というか、登場人物の日々の『営み』を撮りたいと思ったんですよね。原作を読んだときに生活にまつわるいろんなことが書かれていて。たとえば、野菜を食べるとか、夜寝る前に本を読むとか、恋するとか、友達と遊ぶとか……佐藤(泰志)さんは自分が生きていた時代をまるごと記録しようとしたのでは、って思ったんです」
中学時代に映画づくりに興味を持って、高校時代にはミニシアターに映画をよく観に行く映画少年になり、一橋大学時代は映画漬けの青春時代を送ったという三宅。今作は、いわゆる一般的な青春映画とは一線を画するもののようだ。
「絶対に思い出ムービーにはしたくないって思ってました。青春って、現在進行形で前に進んでいくようなヒリヒリするもの、スリリングなものだと思うんです。とりかえしがつかない失敗談も、とりかえしがつかない幸せもある。人生が1回しかないからこそ、『もう二度とない瞬間』がちゃんと映った映画にしたかったんです」
彼なりの方法で「青春」と向き合った三宅は、「青春」というものについて、
「どの時代にしろ、人生は死んだら終わりですから。人生は1回しかないっていうことの残酷さとか、それゆえに生まれる幸せを、一番感じられる時期が、たまたま青春って呼ばれているのかなって気はしますね。人生2回、3回とかあったらほとんどの芸術の意味はなくなると思います。人生の1回性に直面する時期を、人は青春と呼ぶんだと思います」
と語っており、『きみの鳥はうたえる』は、そういった思いが投影された作品に仕上がったようだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.139(2018年8月21日発売/太田出版)
【関連リンク】
・『クイック・ジャパン』vol.139
・映画『きみの鳥はうたえる』オフィシャルサイト
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