『ANN』50年史 握手会に2000人を集めた「架空のアイドル」

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昨年50周年を迎えたANN(オールナイトニッポン)は、これまで数多くの新人を発掘してきましたが、パーソナリティに起用するだけでなく、“番組発のアイドル”まで生み出したことがありました。きっかけは、1989年に伊集院光がANNのフリートークで、「映画監督の大島渚はアイドルの名前みたい」といった発言をしたことです。

リスナーから「歯がゆいって言葉もアイドルっぽい」というハガキが届いたことからすべてが始まり、この「芳賀ゆい」と命名された架空のアイドルについて妄想する企画が始動。最初は「芳賀ゆいを見た」「芳賀ゆいはこんな女の子だ」といったネタ投稿が中心でしたが、リスナーからデビュー曲のタイトルやCDジャケットのイラストが届くようになるほど反響を呼んだことで、本当に芳賀ゆいを作ることになりました。

リスナーと共同で作り上げた設定は、「16歳前後」「ポニーテール」「ややタレ目で小柄」というもので、1990年2月には握手会も開催。実在しないアイドルのために雨の中2000人ものリスナーが集結しました。その方法は、箱に隠れて手だけを出した女の子と握手するという方法だったそうです。

こうしてマスコミの注目を集めるようになったことで、芳賀ゆいは本物のメジャーレーベルまで動かします。同年7月に『星空のパスポート』というシングルでCBSソニー(当時)からCDデビューすることになるのです。しかも作詞は奥田民生、編曲に小西康陽という豪華さでした。ちなみにB面では伊集院自身も作詞をしています。

このあとも芳賀ゆいは顔を隠した水着グラビアや歌番組への出演など、メディアミックス的な展開を繰り広げていきます。自分たちの手で理想のアイドルを作っているという一体感によって前代未聞の盛り上がりを見せたプロジェクトは、番組自体の最終回にともない、約1年で「芳賀ゆいの海外留学による引退」という幕切れを迎えました。

◆ケトルVOL.45(2018年10月12日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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