1989年に行われた新日本プロレス初の東京ドーム大会で誕生したマスクマン「獣神サンダー・ライガー」は、今年30周年を迎えました。まさに平成の新日本マットとともに歩んだ30年。その歴史は現在とはまったく違うコスチュームから始まりました。
「今の僕の姿しか知らない人は面食らうと思います。そのまま2シリーズくらいやったかな。でも、最初の騎士みたいなマスクは口全体が覆われて、呼吸がキツかったんですよね。それからアニメの『獣神ライガー』の風貌が変化していくのに合わせて、今の角が生えているコスチュームに変えていったんです」
永井豪が原作を手がけたアニメ『獣神ライガー』のリアル版として誕生したライガー。東京ドームという大舞台で華々しいデビューを飾りましたが、その試合内容は決して満足できるものではなかったと言います。
「デビューが東京ドームだと聞いたときは、『あんな広い野球場でプロレスをするんだ』って思ったくらいでしたけど、実際にあそこに立ったら、ものすごく緊張して。しかも相手は百戦錬磨の小林邦昭さん。僕がファン時代から活躍していた選手との試合ということもあり、気合が入りまくっていましたね。でも結局、プレッシャーに押しつぶされて。試合には勝ったけど自分の力を出し尽くすことができたとは言えない内容でした」
◆今が一番すごいなんて絶対に言えない
マスクマンとしての30年にも及ぶキャリアの中で、東京ドームが超満員になった時代も経験した一方、空席が目立つ冬の時代も経験してきました。そんなライガーは今の新日本の活況ぶりを、どう感じているのでしょうか?
「でも、昔は金曜20時のゴールデンタイムで放送されていたから。視聴率も20%くらいあった。ドーム興行だって東京だけじゃなく、大阪や福岡でもやっていた。それを考えたら、『今が一番すごい』なんて絶対に言えない。
地方大会がガラガラだったとき、真壁刀義選手がよく言っていたよ。『ライガーさん、次に来たときはもっとお客さんを入れましょう』って。それで毎回全力で試合して、100人を200人、200人を500人、500人を1000人って徐々に増やしていった。これはドームも一緒ですよ。『これで大丈夫』と思ったら元に戻ってしまう。でも、そういう精神は真壁選手だけじゃなく、棚橋弘至選手やオカダ・カズチカ選手といったほかのレスラーも持っているからね。オレ? オレはとにかくプロレスがやりたいだけだから、お客さんが少なくても楽しいかな(笑)」
近年は東京ドーム大会でタイトルマッチに絡むことも少なくなってしまいましたが、それでもファンは再び大舞台で活躍するライガーの姿を待ち望んでいます。
「最近は放送席から試合を観ることも増えましたけど、今の新日本ジュニアの闘いは本当にすごいですよ。だから、オレはもういいんじゃないかな?(笑)。チャンスがあるとしたら、一発勝負のシングルマッチですね。ベテランのずる賢さで、今の選手を翻弄しますよ(笑)」
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