1月4日に開催された新日本プロレス東京ドーム大会(イッテンヨン)で、クリス・ジェリコを撃破してIWGPインターコンチネンタルの王座を奪取した内藤哲也。2018年の東京ドーム大会ではメインイベントに登場し、中学3年生でプロレスラーになると決めたときに立てた「東京ドームのメインイベントの花道を歩く」という夢を叶えた内藤ですが、東京ドームという大舞台は、レスラーにとっては難しい場所のようです。「ケトルVOL.46」で内藤はこのように語っています。
「東京ドームは一体感を作るのが難しいんですよ。僕はどの会場に行っても、まず一番遠い席に座ってリングを見るんですね。そこから試合がどう見えるか頭に入れておくんですけど、東京ドームは広すぎて、一番遠くのお客様まで巻き込むことがなかなかできなかった。でも、2017年の棚橋(弘至)戦では、一番遠くのお客様まで含めて、みんなこの試合に集中しているなっていう手応えを感じられました」
そこには、内藤が誰よりもプロレスファンだったから身につけることができた“お客様目線”を大切にする姿勢が関係しています。プロレスは単純に試合だけを観ても楽しいですが、試合の背景にある“流れ”を知るともっと楽しいもの。だから内藤は試合前には積極的にメディアを通じて、「この試合にはどんな対立軸があるのか」「選手同士にどんな因縁があるのか」という情報をわかりやすく発信しています。
イッテンヨンの棚橋戦でも、自身が棚橋弘至に憧れて新日本に入団したこと、そんな憧れの先輩を引きずり下ろすのは自分の役目だと思っていたこと、しかしそれが長年叶わず、ついにそのチャンスを迎えたこと……。そういった背景を事前に伝えておくことで、観客が試合に感情移入しやすくなるように促しました。それが初めて「東京ドームのお客様を手のひらに乗せる」ことにつながったのです。
「お客様の中には初めて試合を観る人もいるわけで、そういう人にもプロレスの魅力がきちんと伝わるようにってことは常に考えています。昔、僕は中邑真輔から、『内藤はプロレスファン過ぎて、プロレス以外のアイデアがない』と批判されたこともありましたけど、今となっては熱心なプロレスファンであることが、僕の一番の武器だと思っています」
2019年は年頭からベルトを奪取し、最高のスタートを切った内藤。昨年11月にはNHKのドキュメント番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』に取り上げられるなど、その人気ぶりが衰える様子がないのは、さまざまな手段でファンに話題を提供し続けたことが影響しているのは間違いないようです。
◆ケトルVOL.46(2018年12月15日発売)
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