新日本プロレス恒例の東京ドーム大会「イッテンヨン」が、いよいよ今日開催される。本日のメインは、昨年度のプロレス大賞のMVPに輝いた棚橋弘至が、IWGPヘビー級王者のケニー・オメガに挑む一戦。棚橋は昨夏の「G1 CLIMAX 28」(G1)以来、「品がない」「賞味期限切れ」など、盛んにオメガを挑発しているが、これにはどういう意図があるのか? 「ケトルVOL.46」で棚橋はこのように語っている。
「これはプロレスのスタイルに関する部分なんですけど、このままケニーのスタイルが正しいってなることに僕はすごく危機感を覚えているんです。たとえば、10月8日の両国大会にIWGPヘビー級王座戦として行われた3WAYを観てもそう思いました。あそこで闘っていたケニー・飯伏・Codyの3人は別に対立しているわけじゃない。ベルトをどうしても取りたいって気持ちも見えない。だから、ファンもどこに集中して応援したらいいかわからなかったのではないかと感じました」
こうした“対立軸がない選手同士”の試合では「観客から絶対勝ってほしいという応援が生まれにくい」と分析する棚橋。一連の言動は、彼の危機感の現れだという。
「なんとなくすごいものを見せてくれそうだなって部分でしか期待感を作れなくなるんです。今の新日本はケニーがベルトを持ってから、そうなりつつあるんですよ。お客さんがカタルシスを感じるためには、残酷な攻防を見せないといけなくなっています。
でも、僕は『好きな選手に勝ってほしい』というシンプルな願いに、プロレスの原風景があると思っています。好きな選手に勝ってほしいから会場へ応援に行く。好きな選手に勝ってほしいから選手のグッズを身に着ける。それなのに選手の側が勝負論を否定するのは、ちょっと違うんじゃないかって思うんです」
それでは、ケニーに辛辣な言葉をぶつけているのも、「どっちを支持するか?」という対立軸を作るためなのだろうか?
「ケニーはヒールにもベビーフェイスにも振り切らない。だから僕はケニーのファンが、『棚橋キライ!』ってなるようなことをあえて言い続けています。こういう僕の発想自体を、ケニーは『古臭い』『棚橋がベルトを持ったら時代が戻る』と批判するんですけどね。でも、それはケニーの印象操作に過ぎないと思っています。
結局、プロレスには“前後(新旧)”はないんですよ。だって、昔のプロレスを観ても面白いじゃないですか。あるのは“左右(思想の違い)”だけ。実際に問われているのは、今後の新日本が左か右のどっちでやっていくのかってことなんですよ」
しかし、そうした対立軸を設定されると、ケニーにとっては“新日本×外敵”という構図に飲み込まれてしまうおそれがある。だから、“新旧”という別の対立軸を持ち込もうとしている。それが、棚橋の見立てのようだ。
「実はケニーにとっても、『棚橋がやっていることはいつも一緒だ』という部分しか僕を切り崩す隙がないんですよね。そう言っておけばケニーのファンも、『確かに棚橋はもう年だよね』ってなるじゃないですか。じゃあ、僕がどうするかって言ったら、ケニーばりのカラダに仕上げて、試合でも向こうのスタイルに完全に乗っかってやろうと思っています。こっちは相手の土俵で勝つことが一番気持ちいいし、向こうは自分の土俵で負けることが、一番悔しいですからね」
1月3日の会見では、オメガから「まだ俺に勝てると思っているのか」と、激しく挑発を受けた棚橋。このままオメガ時代が続くのか、はたまた棚橋が王座に返り咲くのか、勝負の時はもうまもなくだ。
【関連リンク】
・ケトルVOL.46
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