精神科医の香山リカが、「サブカルチャー」の歴史から、90年代の「悪趣味」ブーム、平成末期の「ヘイト」の関連まで、「表現することの未来と自由の可能性」を解き明かす『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版)が、3月16日に発売された。
この本は、バブルに沸く日本で「表現の自由」を拡張したサブカルチャー、その象徴である漫画家・根本敬の世界に魅せられた香山が、平成も終わる今、改めて「表現の自由」について考えた本だ。根本の漫画には、性倒錯者、糞尿マニア、守銭奴、乱暴者、貧乏人などがしばしば登場するが、香山は31歳の時に書いた根本敬論で、
〈「見てはいけない」の線が越えられている。私が、それを見たいというのは「恋」の視線なのだ、だから弾圧されることなどあってはならない〉
と、つづっており、今回の新刊では、
〈あのとき「恋」という言葉で説明してしまった根本の漫画を、平成も終わるいま、もう一度、社会の中で考えてみたい。それがこの本の目的である〉
と、解説。いつのまにか「語ってはいけない」「見てはいけない」ものが増えてしまった今、表現の自由の意味を問い直す。
その内容は、「不条理論」「精子論」「差別論」、さらに根本の重要な仕事である「ディープコリア」「ゲルニカ計画」など、さまざまな観点から根本を語っており、「精神科医になって感じた『生きる』のリアル」「『ペニスを持った母親』という空想」「『タブーを破る』とはどういうことか」「教養と知性、悪趣味・鬼畜ブーム」「サブカルの逆襲、サブカルの結末」など、精神科医の香山だからこそ語れる論考が次々と登場。34ページにわたる根本の作品も挿入されている。
『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』は2019年3月16日発売。2200円+税。
【関連リンク】
・ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論-太田出版
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