ノルマ思考から脱するテクニック 「目標値をあえて5倍に」する効能

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これまで多くの企業で、当然のように課せられてきたのが「ノルマ」。しかし今の若者世代は、幼少期からデジタル機器に慣れ親しみ、欲しい情報、やりたいことに苦も無くアクセスできる時代に育ち、労働環境一つとっても、転職、独立、副業など選択肢は増えている。そんな若者をノルマで縛るマネジャーは、居場所がなくなるのは必至だ。

『ノルマは逆効果 ~なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか~』(藤田勝利・著/太田出版)では、ノルマを「本人の意思から離れ、他者から与えられた、本人が主体的に同意していない業績目標値」と定義。ノルマ的な発想から逃れる1つの方法として、次のような方法を紹介している。

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これからの時代は、ノルマという数字の強制力でしか部下を動かせないマネジャーの居場所はますますなくなってくるでしょう。短期的には業績が上がったり昇進したりすることができたとしても、ノルマに依存したマネジャーには、「新しい価値を生み出す力」「戦略を描く力」「人を動機づけるコミュニケーション力」といった重要なマネジメント能力が育ちにくいからです。

ノルマがなくても、自発的に発想し、動けるマネジャーかどうかを判断する簡単な方法が一つあります。一種の逆療法ですが、目標値をあえて「5倍」に設定してみるという思考実験です。そのとてつもなく大きな数値を前にしてどう感じるか、どう発想するか、を自ら見つめてみます。例えば、

●月の新規商談目標20件のところを100件に
●半期の受注額目標2億円のところを10億円に
●利益率10%の目標をあえて50%に
●1割の時間短縮の目標を、一気に5割短縮に

といった具合です。もちろんこれは仮想であり、現実的には達成するのは極めて難しい目標です。しかし、自ら構想を練られる人は、ここで、

「これまでのやり方を一旦全否定して考えてみるか」
「もしかすると、こういう方法もあるかもしれない」
「このような技術を使って告知をすれば、10倍のお客さんに発信できるかもしれない」
「そもそも、これまでやっていたこの方法が無駄だったから、思い切って変えてみるか」

といった、創造的なアイディアを思いつくことができます。これまでの想定数字よりも大幅に大きい数字だからこそ、これまで慣れ親しんだ発想から脱することもできるのです。こういう発想ができる人たちは、ノルマという制約がなくなっても、ノルマがあった時以上の成果を挙げられる可能性が高いです。自らの頭で自発的に発想できる土壌があるからです。わかりやすい例を挙げます。

ネスレジャパンの高岡浩三社長は、従来の発想に囚われない斬新な打ち手で実績を上げているリーダーとして有名です。その高岡社長がまだ一事業マネジャーだった時代に、主力商品「キットカット」の販売を大きく伸ばした斬新な販売促進手法を思いつきました。そのきっかけは、ネスレ本社から「営業利益の500%アップ」というとんでもない目標が課せられたことだったそうです。

数パーセントではなく、500%増(つまり6倍)の利益アップ目標となった時、高岡社長は「従来の狭い思考の枠に囚われては、不可能だ」と考えました。そして、「キットカット」を「きっと勝つ」という合格祈願のメッセージとかけて受験生が宿泊するホテルと連携してチョコレートを販促するなど、全く新しい手法を確立して行きます。それ以外にも、インスタントコーヒー販売の枠を破って「ネスカフェアンバサダー」などの斬新な取り組みでオフィスでのコーヒー需要を大幅に伸ばした実績も有名です。

上記の5倍という仮想数字を見て「想像すらできない」「思考が全く止まってしまう」というマネジャーは、厳しい言い方をすれば、ノルマ管理に慣れ切ってしまっているのか、むしろノルマがあるから心地よいと感じてきた人たちかもしれません。

ノルマがなくても自ら動く組織を作るには、あえてこのような大胆な目標を問うてみて、自身がどのような発想を持っているかを試すのが良いでしょう。それは、ノルマのように受け身で考える仕事ではなく、自ら挑戦的に考える楽しい仕事のはずです。まずは、それに気づくことがスタートです。

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人は常に、凝り固まった考え方やルーチンに囚われがちだが、突拍子もない目標を設定することで、思考をクリアにするのがこの方法。もちろん“5倍の目標値”が達成できれば万々歳だが、ノルマ的な思考法から解き放たれ、自由な思考をすることに意味があるようだ。

◆『ノルマは逆効果』藤田勝利(2019年2月19日発売/太田出版)

【関連リンク】
ノルマは逆効果 ~なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか~

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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