5月22日、Kan Sanoのニューアルバム『Ghost Notes』がリリースされた。米の名門・バークリー音楽大学卒業という経歴を持ち、国内外のアーティストから熱烈な支持を受けるKanだが、今作ではどんな音作りを目指したのか? 2019年6月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.144で、Kanはこのように語っている。
「僕は社会問題や政治的なことを直接的に音楽に込めたりしないタイプなんですけど、やっぱり今の時代をちゃんと生きていたいとは思ってるんですよ。だから、今回のアルバムでは70年代のソウルとか90年代のネオ・ソウルの影響を多大に受けてきた部分を出しましたけど、これも懐古主義でやってるわけじゃなくて。今の音を鳴らしたいってのが大前提としてあるんです。
自分が聴きたい音楽っていうのが、どこを探してもないっていう感覚が僕はいつもあって。物足りなさや、自分自身の居場所のなさを常に感じてるんです。でも孤独な感じはしなくて。僕がそう思ってるってことは、ほかにも誰かそう思ってる人がいるんだろうなって。そういう人に届けばいいなって思って作りました」
新作の『Ghost Notes』は、エッジーでありながら、チャートのど真ん中にも届くポテンシャルを持った作品。Kanは同作を「30代の自信と諦めが、ストレートに出ちゃった感じ」と評している。
「前の作品では自分のポジティブな感情が世の中との接点になるって思って作ってたんですけど。今の時代の感覚だと個人的にも、社会全体を見渡してみても、そういうことじゃないなって思いはじめてきて。本当に生きにくい時代ですよね。みんながみんなの粗探しをしていて。だからこそ『音楽くらいは自由にやらせてくれよ』って思ってます」
米への留学を経たKanは、「今の日本の音楽シーンに期待することはそんなにない」とシニカルだが、「シーンが衰退しても、僕は関係なく音楽を作り続ける」とも語っている。新作『Ghost Notes』は、沈滞するシーンに活を入れるきっかけの1枚になりそうだ。
◆『クイック・ジャパン』vol.144(2019年6月26日発売/太田出版)
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・クイック・ジャパンvol.144
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