『時効警察はじめました』 なぜ時効管理課の入り口にヤシの木が?

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オダギリジョー主演のドラマ『時効警察』が12年ぶりに復活。現在第3シリーズの『時効警察はじめました』が放送中です。この12年の間に、霧山修一朗(オダギリ)はFBIへの出向を経験し、相棒の三日月しずか(麻生久美子)は結婚と離婚を経験。時の経過はセットにも現れています。

トタン屋根にむき出しの鉄骨と、物置きに積み上げられたガラクタの山。窓の景色からも察するに、そこは半地下の倉庫を改装したボロボロの空間──。新しい時効管理課の舞台セットからは、12年の歳月を経て、時効管理課が物理的にも立場的にも隅っこへ追いやられてしまったことが、それとなく醸し出されています。美術監督の久渡明日香さんは、『ケトルVOL.50』でこう語っています。

「全く違う世界観にするのか、それとも今までの雰囲気を踏襲するか。セットの方向性については監督と何度も話し合いましたね。ただ、もし私が視聴者の立場だったら、前作がもつ世界観のまま新作を観たい。だから基本的には『もし根本さん(根本研二=前・美術監督)ならこうするだろう』という考えを起点に、前作の真似ではなく“踏襲”する意識で現場に挑んでいました」

そのようなコンセプトのもと、時効管理課がもつ独特な空気感は保ちつつも、ほとんどカメラには映らない天井付近の鉄骨のトラスにこだわり、「出来上がったトラスの色合いが納得いかなければ塗り直しをお願いした」のだとか。さらに入口付近にあるヤシの木にも、深い意味が込められているそうです。

「時効管理課の入り口付近にヤシの木を置こう、というのは三木(聡)監督からのアイディア。でも実際は室内用の鉢植えを使わずに、床からニョキって生やしてみたんです。というのも、時効管理課は窓際部署。建設中にヤシの種がたまたま床下に埋まっていてもスルーするような、ずさんな作りの部屋であるはず。そこで”ど根性ヤシ“が建設後に床をぶち抜いて生えてきた、という設定を作りました。

ちゃんとそこにヤシの木が生えてきた理由や設定まで考えて、その設定にふさわしいサイズや幹の太さのヤシを探したんですよ。そのために植木屋さんへ相談したり、関東一帯でヤシの木を専門に扱っているお店を実際にいくつか訪れたりしました。リアルではない設定ながらも、より空間の中でリアルに近づくようこだわり抜いたパーツの一つです」

この他にも、あえて古めかしい木製の家具を置くことで12年という時を表現したり、デスクにある小物の数々は、前作に登場したものを用意しつつも、時間の経過を表現できるようなこだわりを加えたりと、セットの細部に神経が行き届くさまは、まさに圧巻。今日放送の第5話は、ストーリーだけでなくセットも必見のようです。

◆ケトルVOL.50(2019年10月16日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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