「もうアイドルには戻らない」 槙田紗子と大木亜希子が当時を赤裸々に語った夜

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11月13日、「槙田さんのマキタジャーナル」の公開収録兼トークイベントが東京・高円寺の「高円寺Pundit’」で行われました。

「槙田さんのマキタジャーナル」は、ガールズロックユニット『PASSPO☆』の元メンバーであり、現在、振付師として活躍中の槙田紗子さんが、ただ逢いたい人に逢いに行き、インタビューをして記事を書くという企画。2018年9月に2年半ぶりに突然復活しましたが、槙田さんの筆が止まりやすい為、公開収録をすることに踏み切ったそうです。

公開収録当日、主催者である槙田さんはまず、集まったファンたちに向けて「アイドル時代に一旦終了した企画ですが、イベントにすればまた書くだろうと思いまして。今回は元SND48のメンバーで、現在はライターとして活躍する、大木亜希子さんにお力を借りる形で、ゲストとしてお呼びしました!」と経緯を説明。その流れからこの日の相方である大木亜希子さんを紹介すると、両者のファンたちから割れんばかりの拍手が巻き起こりました。

何でも2人はデビュー当時、舞台で共演し、それ以来の再会とのこと。「まさか、こんな形で再会するとは……」「呼んでくれて、嬉しいです!」と、再会を喜び合う両者に、ファンたちも感慨深い様子を伺わせます。そして、アイドルを卒業した後に異業種へと転進した2人が、この日の本題である「セカンドキャリア」について語り始めました。

「私は、異業種と言っても、アイドルの子たちを中心に振り付けをする仕事に就いたので、芸能の仕事には携わっています」(槙田さん)

「昔から私は読むことも書くことも好きだったので、ライターになったんです。あと、どうしても本を出したかったので。知り合いの協力もあり、半ば強引に出版社に売込みましたよ(笑)」(大木さん)

と、それぞれが現在どこを舞台にして活動しているかについて紹介。そのなかで、一般の社会人、裏方の仕事をするようになって辛かったことも学んだことも山ほどあるとのこと。

「アイドル時代に見て、経験した社会の縮図も、今、すごく役に立っています」(槙田さん)

「アイドルから会社員記者になった時、ビジネスメールの打ち方すら知らなくて、デコデコの絵文字を使って送ったら、当時の上司が、優しく指摘してくれました。ビジネス用語もまったく知らずに、その場でググッてましたから(笑)」(大木さん)

アイドル時代の頃とは違う景色を見ることで、それまでの経験が活きた場面もあれば経験不足と感じてしまうこともあったそう。さらに話は「承認欲求とアイデンティティーの崩壊」へと展開します。

「ライターを始めた当時は、どこかでまだ、“私は元アイドルです”という承認欲求があったんです」(大木)

「私も、かつてはスタッフの方が何でもしてくれて、今はもちろん自分で動かなきゃいけない事ばかりなので、自分は商品という立場だったんだなと、気付かされることは多々ありましたね。」(槙田)

「アイデンティティーが崩壊しちゃったんだよね。でも、アイドルは一生続けられるものじゃないし、いつか卒業するものだし、人生、一発で全ての方向性を決められるものじゃないからね」(大木)

「そう思います。アイドルをやっているときは、まさか自分が振付師になるなんて思っていなかったし、今まで起こったことにすべて無駄がない、辛いことも含めて今があると思っています」(槙田)

と、軽妙なトークながら、少し哲学的な(?)内容に、ファンはしっかりと頷いている様子でした。

イベントの最後には、質問コーナーを設けました。

「もう一度、アイドルになるおつもりは?」という問いに対し、「もう、客観的になりすぎて無理ですね。今の状態で割り切ってやれば実はすごくいいものができるのかもしれないですが、やる必要性がないというか。私が主催してMCを担当しているサコフェスも、MCすらやらなくていいと思っているくらいですから」と槙田さんは回答。

大木さんも同じく「私もやらないですね。私は無宗教ですが、そういうのは神様がポッと決めてくれるものだとも思うんです。(質問した)あなたもまた、(そのうち)他のアイドルを好きになると思いますし。いや、とても興味深く、面白い質問ですね(笑)」と笑顔で返していました。

ファンとの会話を楽しんだあと、終わり際に槙田さんは「亜希子さんの本(『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』)は、お世辞抜きで本当に面白いです! 読書が苦手な私が、2時間足らずで読み終わったくらいですから(笑)」と会場全体に向けて大木さんの著書の感想を述べていました。それに乗っかり大木さんも「2冊目の私小説も、魂込めて書きました! まずは、1冊目を今日ここで買って行ってください(笑)」と、力強く宣伝していました。

興味がある人はぜひお手に取ってみてください。ちなみに槙田さんは大木さんにサインをねだっていたところも何だか微笑ましく思えました。このように終始、和やかではありましたが、異色のセカンドキャリアを積んでいる真最中であるお2人だからこそ話すことができたと思えるイベントでした。来場した人の中には、もしかしたら自身の今後の人生についても見直す人も現れたかもしれません。

【関連リンク】
槙田さんのマキタジャーナル

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<プロフィール>

●槙田紗子
1993年生まれ。神奈川県出身。
2009年ガールズロックユニット「ぱすぽ☆」のメンバーとしてデビュー(2015年12月卒業)。現在は、多数のアイドルグループの振り付け、主催フェス『サコフェス』開催など、マルチに活動中。これまで、ときめき♡宣伝部やSUPER☆GiRLSなどのアイドルグループをはじめ、映画『女の機嫌の直し方』の劇中振付を担当するなど、さまざまな分野で活躍を続ける。

●大木亜希子
ライター、タレント。
1989年生まれ、千葉県出身。
2005年、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)で女優デビュー。数々のドラマ・映画に出演後、2010年、秋元康氏プロデュースSDN48として活動。その後、タレント活動と並行し、ライター業を開始。2015年、しらべぇ編集部に入社。2018年、フリーランスライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)がある。

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。