Licaxxx 「音楽人」という扉、そこで見出した理想の姿勢

カルチャー
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Licaxxxは、東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。そんなLicaxxxの連載『マニアックの扉』がワンテーママガジン「ケトル」にてスタートした。第5回目は彼女が理想とする“音楽人”という扉を開ける。
※「ケトルVOL.53」及びnote(https://note.com/kettlemagazine)で連載中の一部を紹介

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第4回まで、私、Licaxxxの興味ある音楽周辺の分野ついて探求してきた。映画、SFアニメ、演劇、それらはすべてエンタメである。しかし今、エンタメ業界、特に人を一堂に集めて体験をさせるものは非常に危機的状況だ。

ご存じの通り、COVID-19によって世界中で毎日のように状況が変わる。毎日いろんなところから情報を集め、自分のあるべき態度を普段以上に考え行動するのもなかなか楽ではない。でも曲がりなりにも人前に立つものとしての対応が求められる。考えあぐねた結果、私はその態度として連載を活用することにした。そうしようと思うまでの思考の道筋と、批判ではなく“批評”を丸ごと見てもらって、ご自分で考える時の参考にしてもらうために。

ツイッターで何かを言及するも、家で聴けるようにとミックスを上げるのも、何もしないのも、すべてが態度となって世間に示される。それに対して、情報を収集し、あらゆる意見を批評して、自分の意見を発言できる、そんな能力を身につけるための手助けをしたい、というのが私の態度なのだけれど、まずは、私の考える理想の音楽人の姿勢に立ち返ろう。

音楽で(特に現場ありきで)表現する行為を、聴く人たちをただ夢中にさせるためのものとは考えていない。盲信的な、あるいは一時的な盛り上がりを想定していないし、その場をただ良い感じにするだけの機能で終わりたくない。だから裏には、現実を見つめる鏡になるように、という設定がある。

ジョージ・オーウェルの世界で言う二重思考、『虐殺器官』ならトリガーとなる器官。つまり、直接的な言語による定義や扇動を避け、情報を取捨選択して答えを吐き出すという“思考プロセス”を促すこと。私の音楽や発言、私自身をキッカケに、同じような行動をしたり文化に触れていったりしてもらうのが目的だ(もちろん、同じプロセスを経たとしても結論が全然違うこともありうる)。

それは音楽周辺のカルチャーだけに留まらない。今回のように何かが起きれば早々に他国との違いにぶちあたり、国民としての生活や政治に辿り着き、基盤が整っていなければただ好きだった音楽さえ奪われ楽しめなくなってしまうのだ。

この続きはnote(https://note.com/kettlemagazine)で読めます。

◆音楽人の扉のカギ
『1984年』:
ジョージ・オーウェルの小説。刊行は1949年。近未来のディストピア社会を舞台としている。「ビッグ・ブラザー」「テレスクリーン」「101号室」「思想警察」「二重思考」といった造語が後に全体主義を表現する一般的な語彙となり、『1984年』で描かれたような全体主義的な思想や傾向や社会は、「オーウェリアン」(オーウェル的世界)と形容される

『虐殺器官』:
34歳の若さで早逝した伊藤計劃による処女作。刊行は2007年。伊藤は、学生時代にプレイした「スナッチャー」からゲームデザイナー小島秀夫の作品にのめりこみ、後に「メタルギアソリッド4」のノベライズも手がける。『虐殺器官』も「スナッチャー」の二次創作として温めていたものを膨らませて独立させたSF小説

無知の知:
ソクラテス哲学を特徴づける有名な言葉で、真の知に至る出発点は無知を自覚することにある、とする考え方。ソクラテスは著作を残しておらず、彼の思想は、他の思想家の著作(特に有名なものはプラトン『ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』の3作)に書かれている彼の言動からのみ窺うことができる

【プロフィール】
Licaxxx
DJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。イベント出演のほか、ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽など多数制作

◆ケトルVOL.53〈2020年4月16日発売〉

【関連リンク】
ケトルVOL.53-太田出版
雑誌「ケトル」編集部- note

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

筆者について

Licaxxx

りかっくす。DJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。イベント出演のほか、ビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽など多数制作。

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太田出版