劇伴音楽挑戦の尾崎世界観「自分の中に知らない部屋があるのを見つけた」

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志村貴子の恋愛オムニバス漫画『どうにかなる日々』のアニメ化が実現。主題歌と劇伴音楽をクリープハイプが担当する。近日公開される同作は、様々な恋模様を淡く繊細に描いた物語だが、クリープハイプのボーカル/ギターの尾崎世界観は、作品とどう向き合ったのか? 2020年4月25日発売の『クイック・ジャパン』vol.149で、尾崎はこのように語っている。

「『この作品なら良いものを作ることができるんじゃないか』と思いました。いろんな話が入っていますけど、全体的に流れている空気が好きです。自分が曲を作るときも、漫画の短編のように作る感覚があるので、その部分もしっくりきました。

それと、『今っぽい作品だ』と感じましたね。20年ぐらい前に発表されて、当時もすごく先をいくような作品だったと思うけれど、いま時代が追いついているような印象が面白かったです。自分がバンドをはじめたぐらいのときからはじまった作品の劇場アニメの劇伴を、バンドがなんとかなってメジャーデビューできて、任せていただけるというのは、すごくうれしいことですね」

志村の作品は、リアルだからこそ愛すべき情景描写や、良い・悪いでは割り切れない価値観を表現する点が大きな魅力。善悪や好き嫌い、幸・不幸では割り切れないものをそのまま届けるような志村の作風は、尾崎の感覚にもフィットしたようだ。

「自分もそうでありたいと思うし、そういうことをしているつもりです。ものごとを善悪で簡単に割り切らない手法はすごく好きだし、これがいいのか悪いのかの答えが出ないということは、本気で考えているからだと思うんです。突き詰めたらわからなくなるだろうし」

作品の端々で志村との共通点を感じたという尾崎。主題歌および劇伴に挑戦したことで得たものは大きかったようだ。

「普段は感じても絶対使わずに捨ててしまうような感覚を使えた気がします。まだ自分の中にはまったく知らない部屋があるのを見つけたようで、楽しかったです。自分にそういう欲があったことに気づけたというか、改めて、できないことや不安なこと、不自由なことがあるのはすごくいいことだと思いました。

『クリープハイプが今までにないような曲を作ってきた』というのともまた違ったことだと思うし、それをやったときに、得るものがすごく多かったです。音楽に対してより開けたし、こういうこともやれるんだとわかった。だけど、まだ理想には届かなかったという実感もあるので、これからもいろんなことをやるべきだと気づかせてもらいましたね。広くなった感じがします」

クリープハイプの他に、他のアーティストへの楽曲提供、文筆業、ラジオ、テレビなど、幅広く活躍する尾崎だが、初挑戦でまた新たな扉が開けたよう。創作意欲を刺激された彼が今度はどんな作品を生み出すか、また1つ楽しみができたようだ。

◆『クイック・ジャパン』vol.149(2020年4月25日発売/太田出版)

【関連リンク】
『Quick Japan』vol.149-太田出版
「どうにかなる日々」アニメ公式サイト

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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