全編リモート撮影の「カメ止め」続編 上田慎一郎監督が語る撮影秘話

カルチャー
スポンサーリンク

2018年に『カメラを止めるな!』で社会現象を巻き起こした上田慎一郎監督が、緊急事態宣言が発令されてから1か月とかからずに短編映画を製作し、YouTube 上で『カメラを止めるな!リモート大作戦!』を公開。1週間で28万回以上の再生回数を記録するなど、大きな話題を集めています。

同作は、製作発表をしてからすぐに脚本の構想を練り始め、翌日にはキャストへ出演依頼をしたのだそう。撮影はすべてリモートで行われましたが、どのように進行したのでしょうか? 『ケトルVOL.54』(2020年6月15日発売)で、上田監督はこう語っています。

「最初に声をかけたのが主演の濱津隆之さん、続いて他のメインキャスト。9日には全キャストが決定したので、その晩に5時間ほどで脚本を一気に書き上げました。ウケとかも気にせず、とにかく夢中で」

その後、撮影がスタートしたのが、おおよそ15日頃から。なぜ“おおよそ”なのかというと、撮影の大部分を俳優たちの自撮りに頼ったため。各自が都合の良いタイミングで撮影を行うことになったので、明確なクランクインがなかったのです。でも、スマホで撮ったものをそのまま送ってもらうと画質や画角にばらつきが出るはず。それは良かったのでしょうか。

「でも、その方がリアルで面白いなと思ったんです。ヒロイン役を演じた秋山ゆずきちゃんが撮った映像がやたら綺麗だなと思って聞いてみたら、1万円ぐらいする自撮り棒を使って撮ったらしくて。流石だなと思いました(笑)」

撮影は俳優の持っているスマホとビデオ会議アプリで行うため、カメラマンがいないどころか、俳優が同一画面上で共演することもできません。しかし上田監督は、リモート撮影ならではの映像表現にもしっかり挑戦しました。

「この短編作品には、リモート撮影あるあるをふんだんに盛り込んでいます。ただ、それはやっちゃダメでしょってことを当然のようにやってしまうのが、『カメ止め』のキャスト陣らしさでもあって。例えば、俳優によって昼に撮ったり、夜に撮ったりとバラバラなのでシーンがつながらないとか。あとは自撮りじゃないように見せる方法も試してみましたね」

編集作業もすべてリモートで行ったという『リモ止め』。特に印象的なのが、日暮監督の一家が自粛生活が終わったらやりたいことをお酒を飲みながら延々と語り続けるシーン。ヒロインが思わず涙を流しますが、リアルとフィクションを超えた尊いものになっています。そのことについて上田監督は、公開後のティーチインで次のように語ります。

「シナリオ上の台詞ではありますが、アドリブもかなり入っていましたね。だから、映画的にはフィクションだけど、涙を流しながら語る彼女の気持ちは本当なんですよね。さらに付け加えるとすると、あのシーンには僕の思いも込められていて。実は台詞を書きながら自分自身も泣いてしまったんですよ。早くライブハウスにも行きたいし、お笑いを見てゲラゲラ笑いたいし、みんなで朝までオールで飲み明かしたいよねって」

リモートでも楽しい作品を作れることを教えてくれた上田監督。コロナ騒動はまだまだ収束が見えない状況ですが、次作はぜひとも劇場で楽しめる作品を期待したいものです。

◆ケトルVOL.54(2020年6月15日発売)

【関連リンク】
ケトルVOL.54
短編映画『カメラを止めるな!リモート大作戦!』本編-YouTube

【関連記事】
映画化権の金額は1ドル 若き才能を応援するS・キングの「男気」
劇場版クレヨンしんちゃんの進化の歴史 「見せたくない」から親子3代で楽しめる作品に
『X-MEN』シリーズの作者スタン・リー そのキャリアは「コネ」から始まった

※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

関連商品
ケトル VOL.54
太田出版