現在放送中のバラエティ番組で、とりわけ話題になる機会が多いのが『水曜日のダウンタウン』(TBS)。「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」「芸人が今までで一番面白かった瞬間は誰が見ても面白い説」「新元号を当てるまで脱出できない生活」など、これまで数々の“神回”を生み出してきた『水ダウ』で、総合演出を手がけるのが藤井健太郎さんです。
彼が手掛ける『水ダウ』は、検証する「説」が最後までどう転ぶかわからないところに面白さがあり、クイズ番組『クイズ☆正解は一年後』は、年始に1年間で起こりそうなことを予想し、年末に答え合わせするまでの空白期間がカギですが、こういったドキュメンタリー的な手法はどうやって生まれたのでしょうか? 藤井さんは、『ケトルVOL.54』で、このように語っています。
「面白さのベクトルっていろいろあると思うのですが、個人的にはこちらの目論みから外れたところで笑いが起こる方が好きなんですよね。場合によっては予想外の方向に向かうことでつまらなくなる可能性もあるのですが、それはそれでありのままを見せた方が、現在の視聴者は納得してくれるんじゃないかなって。もちろん、もともとの想定より面白くなるのがベストですけどね」
こういった手法で、放送業界の栄誉であるギャラクシー賞を何度も受賞している藤井さん。現在のコロナ騒動についても、「百年に一度あるかないかの出来事」「もし許されるのであれば、一人でもカメラを持って記録したい」と、好奇心は尽きないようですが、同時に「ひっそりと何かが起きているのではないか」と期待しているそうです。
「芸人さんの中には自粛期間を利用して密かに何かを練習してすごく上達している人がいるかもしれないし、逆に『それ、全然関係ねえだろ』とこちらが思わず突っ込みたくなるようなことに取り組んでいる人がいるかもしれない。もしかしたら、誰も想像つかない変な生活ルールを設けている人もいそうですよね。
あと、このコロナのことをまったく知らない人が一人ぐらいいるんじゃないかなと思っていて。前に伊豆諸島の青ヶ島に住んでいる仙人みたいな人を取材したことがあるんですけど、あの人とか下手したら可能性あるんじゃないかな、とか(笑)」
どんなことも何とか笑いに転じようとする藤井さん。その姿勢は番組制作にも表れており、時に賛否両論を巻き起こしますが、前向きな彼は今の状況をこのように捉えているそうです。
「ここ数年は、移動中とか空いた時間にパッと観られるものが求められる流れがあったと思うんです。だから、YouTubeやスマホ動画の需要が増えたのでしょうし。でも、家にいる時間が増えたことで、腰を据えて長尺の映像をテレビ画面で観るきっかけができたと思うんですよ。この状況が明けても、そういう習慣が少しは残るんじゃないかと感じているんですよね。だから今を機会と捉えて、僕たちがいかに面白い番組を制作できるかが重要だと思います」
面白い企画が生み出せるのは、背景にこういったポジティブな考え方があるのは間違いないよう。まだまだコロナ騒動は先が見えない状況ですが、敏腕テレビマンのマインドに学ぶことは多いようです。
◆ケトルVOL.54(2020年6月15日発売)
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・ケトルVOL.54
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