とにかく実写撮影にこだわるノーラン監督 7歳で制作した作品の“リアル”

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全世界の興行収入が3億ドルを超えた『TENET テネット』の監督であるクリストファー・ノーランは、CG全盛の時代でも本物の迫力にこだわることで有名。ビルを丸ごと爆破する(『ダークナイト』)、戦争映画で当時の戦闘機を飛ばす(『ダンケルク』)、撮影のためだけに広大なトウモロコシ畑を作る(『インターステラー』)など、VFXの技術が上がり、ほとんどの映像がCGで作り上げられるようになったいまも、実写撮影にこだわることで知られています。

最新作『TENET テネット』でも実際にジャンボ機を爆破したように、世界の映画監督の中でも異彩を放つスタイルのノーラン。なぜ、彼はこれほど“本物”にこだわるのでしょうか。そのきっかけは7歳のときに制作したショートフィルムにありました。

1977年公開の『スター・ウォーズ』に感動し、父親のスーパー8カメラを使った『スペース・ウォーズ』というSF映画を撮影したノーランは、この作品で「粘土や小麦粉、卵の箱やトイレットペーパー」を活用して宇宙のセットを作っただけでなく、本物のロケット発射映像まで盛り込んでいます。

実はノーランにはエンジニアだった叔父がおり、NASAのアポロ計画に関わっていました。彼は甥が映像制作に興味を持っていることを知り、実際のロケット発射映像をプレゼント。初めて観た“本物の映像”の迫力に衝撃を受けたノーランは、その一部をこっそり編集して自分のショートフィルムに組み込みました。

これがノーランの映画作りの原点であり、実際、兄の撮影に協力していた弟のジョナサンは、ノーランが自身のSF映画『インターステラー』で実物大の宇宙船を制作したことに関して、「あの頃と同じことをしている」と苦笑したそうです。

◆ケトルVOL.56(2020年10月15日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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