転売ヤー、違法アップロードに先手を打て! 超人気アニメ『邪神ちゃんドロップキック』のプロデューサーが初めて明かす、型破り、でもファンの心を捉えて離さない宣伝ノウハウのすべてを一挙公開!!
クラウドファンディングやふるさと納税を用いたアニメ制作・違法アップローダーより早い公式切り抜き・転売ヤーよりも安いメルカリ販売・不適切アニメ認定に対する反撃など、大手メジャー作品がやらない施策を行うことで、人気作品に成長させた宣伝プロデューサー・栁瀬一樹さんによる新刊『宣伝は差異が全て 邪神ちゃんドロップキックからマーケティングを学ぶ』を、9月5日に刊行いたしました。
刊行を記念して、OHTABOOKSTANDにて、本文の一部を全3回にわたって公開します。
2023年夏。「コミックマーケット102」マルイブースの目玉は「邪神ちゃんレジ」で、これはお客さんがディスプレイに表示されたバーチャル邪神ちゃんに向かって声で注文をすると、ディスプレイの下に設置された邪神ちゃんの尻尾(物理)を使って商品を渡してくれるという最新のテクノロジーを駆使した体験型の企画です。
イベントが終わった日の夜、私はこの企画で使用した非売品のショッパー(大きめの紙袋)がメルカリで高値で取引されているということを知りました。
アニメ業界でも「転売ヤー」の存在はよく話題になります。転売するのが悪いとか、買う人がいるのが悪いとか、商品を提供する側が適切な値段で十分に提供できていないのが悪いとか、考え方は人それぞれです。
私のスタンスは明確で、邪神ちゃんに関しては作品を作るのにはお金が必要で、そのお金をファンの方が出してくれています。つまり両者は協力して作品を創っているという循環の関係にあるのですが、その外側にいる転売ヤーさんにお金が流れていくことは作品の延命に1円も効かないのでよろしくないなと考えています。
ですから自分たちが作った商品、例えばクラウドファンディング限定のCD「神保町哀歌」にプレミアが付いて1枚35,000円で売買されている様子を見ると、そこまで価値があると思われることをちょっと誇らしく思いながらも、作品の寿命が縮んでいっているような気がして複雑な気持ちになります。
さて、そんな心持ちでしたので、私はメルカリに出品されているショッパーを見た時、このままの状態をスルーするのではなく自ら転売市場に介入していこうと決めました。この施策の狙いは2つあります。1つは転売相場を崩すこと。もう1つは注目を集めることで転売ヤーの皆さんに「邪神ちゃんはいじってはいけないIP」という印象を与えることです。
こうすることで、邪神ちゃんは儲からない上リスクが高いIPということを認知させることができれば、先ほどのサイクルからお金が漏出することを防げるはずです。
私はメルカリで商品を売ったことがなかったので、優れた販売方法がわかりませんでしたので、その道のプロである転売ヤーさんの写真やテキストといった掲載内容を丸パクリし、金額だけを半分にして同じような商品を大量に出品しました。それらのショッパーはすぐに売り切れてしまいましたが、思惑通りそれ以降ショッパーを販売する人はいなくなりました。
なお、この話には続きがあります。邪神ちゃんは作中で燃えるゴミをフリマアプリで販売し、お金を儲けて調子に乗るという描写があります。せっかくなのでこれにかこつけて、イベントで使用した不要なものを売ってみようと考え、お客さんに商品を渡すために使っていた邪神ちゃんレジの尻尾を「良質のゴミです」と書いて出品してみました。
なんとそれはわずか30秒で売れたのですが、不適切な商品を出品したとしてたちどころに運営からBANされてしまいました。これら一連の流れが非常に邪神ちゃんらしく、ネットでは大きな話題となりました。
なお、幸い私はこの時の邪神ちゃんの尻尾の購入者の方がTwitterで嘆いているのを発見できたので、尻尾は後日無料で発送されています。