ChatGPTの登場によって、より身近な存在となったAI。仕事などでChatGPTを活用している人も多いのではないでしょうか。ChatGPTに限らず、近年目まぐるしく進化していくAIはすでに私たちの生活のさまざまな場面で活躍しています。
2024年8月23日に太田出版より刊行した『図解でわかる 14歳から考えるAIの未来と私たち』(インフォビジュアル研究所・著)は、AIの歴史や基礎的な知識を、図を用いてわかりやすく解説しています。私たちの未来を考えるにあたって欠かせない存在であるAIが、どのように生まれ、発展していったのか。AIは私たちにとって絶望なのか、それとも希望なのか。本書を通して一緒に考えてみませんか?
AIの歴史は、1956年にアメリカのダートマス大学に集った4人の科学者による大いなる楽観論からスタートしました。脳神経学研究の進展と、当時としては画期的な汎用コンピュータ(広範囲の応用に利用できる大型コンピュータ)の登場が、彼らの想像力を一気に発火させた結果でした。
彼らは当時こう考えました。コンピュータは、情報をデジタルに記号化できる。人間の言葉も記号化できるし、その知識も記号化可能だ。会議の提唱者であるジョン・マッカーシーは、その記号を使って機械言語によるプログラムもつくりました。このままプログラムを高度化し続ければ、人間のような知識をもつコンピュータなどすぐにできる。そんなコンピュータを「人工知能(AI)」と呼ぼう。マッカーシーはそう宣言しました。
しかし、事はそう簡単ではありませんでした。4人の科学者は、人間の頭脳がもつ世界理解という無限の知識量の前に、茫然と立ち尽くすことになります。
例えば1匹の猫がいます。人間の乳児は、まず生物としての猫を認知して、その属性を自然に学び、猫という言葉を覚え、猫についての概念を身につけていきます。
同じことをコンピュータにさせたとします。「ねこ」という名称は記号化できても、それは実際の猫と関係ありません。コンピュータに猫という生物の概念をもたせるためには、生物としての猫に関するあらゆる属性を記憶させる必要があります。それは、この世界の全ての知識を与えることでもあります。そこには連綿とした知の網の目があり、枠(フレーム)がありません。それに対し、AIは枠内での
処理しかできないため、これをAIの「フレーム問題」と呼ぶようになりました。人間なら乳児でも簡単にできることが、コンピュータには果てしなく困難であることを、AI研究者ハンス・モラベックの名にちなんで「モラベックのパラドックス」とも呼び、現在にまで続くAI研究の難問として、いまだ解決
していません。
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『図解でわかる 14歳から考えるAIの未来と私たち』(インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。