ミュージアム研究者・小森真樹氏による新刊『歴史修正ミュージアム』が、9月29日(月)に刊行された。およそ1年間のフィールドワークで500以上の展示を巡った著者が、ミュージアムで行われている「歴史修正」の実践を通して、現代社会のあり方を捉え直そうとする一冊だ。
「なかったこと」にさせないための、もうひとつの歴史修正
排外主義と陰謀論が飛び交う欧米各地で出会ったのは、負の歴史を未来に語り継ぐための「修正」を実践する数々のミュージアムだった――。
戦争責任の軽視、植民地支配の正当化、差別の否認など、自らに都合の悪い過去をなかったことにしようとする「歴史否認」と、新たな史料や証言の発見や視点の拡張を通じて、過去を反省的に継承し、より多層的なものとして語り直す「歴史修正」。ふたつの「修正」が対立する現代において、ミュージアムはいま「真実をめぐる語り」の土台を支える重要な場となっていると著者は指摘する。
本書では、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーやヴェネツィア・ビエンナーレでのアートの役割、スコットランド国立博物館の植民地主義への批判、アムステルダムの娼婦博物館やロンドンのヴァギナ博物館における性の規範の修正、マンチェスターのミュージアム・オブ・ライフリーのワーキングクラスヒーローたちの物語など、欧米各地のミュージアムを紹介している。
私たちはいま、どのようにして歴史を語り直すことができるのか。現代社会の抱える課題を、ミュージアムの実践から考えていく。
小森真樹著『歴史修正ミュージアム』は2025年9月29日(月)より全国書店、Amazonなどの通販サイト、電子ブックストアで順次発売開始。なお、本書刊行を記念して、OHTABOOKSTANDでは先んじて「はじめに」を無料公開中です。
また、刊行記念イベントが、10月17日にマルジナリア書店、11月に本屋Lighthouseで開催予定です。詳細については、当サイトおよび太田出版ウェブサイト・公式Xにて順次発表中。