読書をする時に、忘れてはいけないアイテムが「栞(しおり)」。栞の誕生は本と同時期だと言われています。日本では『枕草子』にも記述があるほどで、当時は象牙や竹を使用していたそうです。明治中期になってようやく、現在まで続く「紙の栞」が誕生。以降、出版社が販促ツールとして活用するようになりました。近年でも文庫本用を中心に、出版社を象徴するような長期企画から新刊の告知まで様々な栞が作られています。
たとえば、講談社文庫は同社のロングセラー『マザー・グース』の一節に、イラストレーターの和田誠さんの挿絵を添えたデザイン。その歴史は古く、「いつ始まったのか編集長でさえわからない」なんて話もあるようです。それだけに、講談社文庫と言えばこの栞をイメージする人は多いでしょう。
定番と言えば文春文庫もそのひとつ。中世ヨーロッパを思わせる版画風のイラストが不思議と印象に残るこの栞も、長年親しまれています。一方で、2017年に誕生したイメージキャラクター「よまにゃ」をメインに据えた色鮮やかな栞を展開するのが集英社文庫。栞を新キャラクターのPRに活用する戦略が窺えます。
また、岩波文庫は言葉の意味を『広辞苑』から抜粋した連載になっていて、「読める栞」として楽しませているのが特徴です。しかもバリエーションは数十以上だとか。それでもこれらはほんの一部。今も日々、新たな栞が作られ続けています。栞はランダムに文庫本に入れられ、期間限定でしか手に入らない場合も。その栞に誘われ本を買う、なんて出会いもオススメです。
◆ケトルVOL.55(2020年8月17日発売)
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