現在、公開中の『TENET テネット』が好評のクリストファー・ノーラン監督は、リアルさに徹底的にこだわることで有名。過去の作品では、どんな“無茶振り”をしてきたのでしょうか?
●『ダークナイト・ライジング』
「上空1200mで飛行機を宙吊りにして、さらに落下させちゃう」
「ド派手な戦闘シーンが撮りたいから、ウォール街を封鎖せよ」
冒頭のハイジャックシーンでは、上空1200mで飛行機を宙吊りにして撮影を敢行。さらに機体の一部を実際に落下させてしまいました。撮影地となったスコットランドは、雲が低い場所にあり、しかも好天に恵まれたため、かなりスクリーン映えする仕上がりになったとか。またクライマックスの戦闘シーンでは、ウォール街を完全封鎖。数千人のエキストラを集めて、大規模な撮影を行いました。
●『インターステラー』
「広大なコーン畑だって用意する。なぜなら、脚本に書いてあるから」
「5次元空間だって、数学的な理論に根差して創造するのがノーラン流」
主人公たちが住む家の周囲に広がるコーン畑。実は撮影のために植えられたものなのですが、用意した理由が「脚本に書いてあったから」というのが驚きです。また、物語のラストに登場する5次元空間を再現する際にもCGは極力使用せず、セットを使って撮影が行われました。こちらはマシュー・マコノヒーをワイヤーで吊るしてクレーン撮影を敢行しています。
●『テネット』
「既存の空撮はもう飽きた。リアル追求のためなら歴史的戦闘機だって飛ばす」
「たとえワンシーンでもジャンボジェットを購入して過激に爆破」
最新作『TENET テネット』で印象的なのが、ジャンボジェットを利用した豪快な爆破シーン。もともとはミニチュアセットを使って撮影する予定だったそうですが、ロケハンで訪れたカリフォルニア州で中古の飛行機を見つけたことで方針転換。廃棄予定になっていたボーイング747を購入して爆破することにしました。夜間の撮影だったため、大量の照明が必要になりました。
●『ダンケルク』
「人が足りないなら知恵を使え。ボール紙で軍隊を再現」
ありきたりな空撮を嫌ったノーラン監督は、レプリカを製作して使用しただけでなく、戦闘機の愛好家から現存する貴重なスピットファイアを借りて撮影に臨みました。また史実と同じダンケルクの海岸で行われた撮影では、1500人のエキストラに加えてボール紙を人型に切って塗装し、大量に設置。ノーラン監督は、個人では語れない物語を群衆の動きによって表現したかったそうです。
◆ケトルVOL.56(2020年10月15日発売)
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・ケトル VOL.56-太田出版
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